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The Japanese Society for Experimental Mechanics
日本実験力学会
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2022年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告

2022年度日本実験力学会学会賞受賞者が選考委員会において決定しました.2022年度総会(2022年8月25日,鳥取大学)において発表を行い,受賞者には表彰状と記念のメダルを送付いたしました.

(敬称略)
特別賞 (功績賞) 1件

田邊 裕治(新潟大学・学長特別補佐)

授賞理由: 田邊 裕治氏は材料力学およびバイオメカニクスに関わる分野において顕著な業績を有している.特に,「関節の力学的評価とその臨床応用に関する研究」に対して国内外で数多くの高い評価を受けており,実験力学分野の進展に多大な功績を残した研究者の一人である.バイオメカニクスに関する研究成果は160編を超える学術論文として纏められている他,著書,総説・解説,特許および国際会議等を通じて国内外で多くの発表がなされている.本学会においては,学会創立当初から続くバイオメカニクス分科会を主な活動の場として,骨の動力学特性,軟骨含水率の低侵襲測定,変形性膝関節症の運動学的動態解析や画像診断法の開発について,それらの最新知見を提供し,また実験力学会誌およびAEM誌上で論文公表も行った.論文賞の受賞(2007年)があり,実験力学専門術士の称号を授与(2009年)されている.
 一方,同氏は2002年度より2014年度まで評議員,2014年度以降は,理事(顕彰),年次講演会実行委員長,副会長,会長を歴任しており,永く本会の発展に寄与するとともに,2009年度の本会が主催する国際会議ISEMの実行副委員長,2014年度から現在まで本会英文誌AEMの編集委員も務めている.さらに,本会20周年記念事業を会長として推進し,特別企画「『実験力学』のこれから」と題して講演も行った.
 本学会の他にも,医工連携学会である日本臨床バイオメカニクス学会の理事を務め(2017年度から),本学会との協賛の下,2020年に新潟で日本臨床バイオメカニクス学会年次講演会を大会長として主催(「工学者から臨床医へのメッセージ」と題するシンポジウムを企画,シンポジストとして実験力学会会員が参画)した他,日本材料学会衝撃部門賞(2020年度業績賞,衝撃力学のバイオメカニクスへの応用に関して)受賞,等の実績もある.
 以上のように,田邊 裕治氏は,材料力学およびバイオメカニクスに関わる実験力学分野の学術・技術の進歩および学会の企画・運営に貢献するところが極めて大きく,特別賞(功績賞)に値する.

論文賞 2件

本多 晃人(山形大学),幕田 寿典(山形大学)

受賞論文:シリカ膜に覆われたエリスリトール蓄熱マイクロカプセルの開発,実験力学 Vol.21, No.2, pp.150-155 (2021年6月)
授賞理由:本論文では,工場等から発生する産業排熱を有効利用するための潜熱蓄熱材(PCM)として,エリスリトールにシリカを被膜することで耐熱性,耐久性に優れたエリスリトールマイクロカプセル(ERMs)の調製に成功した.ERMsは蓄熱量180 J/gを有し,熱分解温度は213 ℃であり,産業排熱の約7割を占める100〜200 ℃の中低温領域での利用が可能な蓄熱特性と耐熱性を有していることを明らかにした.また,PCMにキシリトールを用いたキシリトール内包シアノアクリレート蓄熱マイクロカプセルと比べ,ERMsは撹拌による物理的刺激で過冷却状態の解除が可能であるため,簡易な操作でカプセル内部のPCMに蓄えられた熱エネルギーを取り出すことができ,実用に適したものである.本論文は,中低温排熱の有効活用を可能とする画期的な潜熱蓄熱材の実用化に対して重要な知見を与えるものであり,工業的,工学的に価値の高い成果を導き出していることから論文賞に値する.

曹 一竜(慶應義塾大学)

受賞論文:PC梁の損傷における力学挙動を定量的に表現したロードマップ・モデルの作成に関する研究,実験力学 Vol.21, No.3, pp.199-207 (2021年9月)
授賞理由:本論文では,鉄道構造物の代表的な部材である鉄筋コンクリート梁(RC梁)を対象に,損傷程度を表す評価指標として固有振動数に注目し,その供用初期から補修が必要な段階に至るまでのロードマップ・モデルを作成している.固有振動数を計測するための非破壊検査法として,高精度であり,かつ現場で比較的簡単に実施できることから衝撃振動試験を採用している.この試験では境界条件を把握することが重要であるが,供用年数の長い橋梁では支持条件などを調査することが困難な場合がある.そこで,低次の固有振動数から,境界条件の影響が小さい高次の固有振動数まで計測し,固有値解析を通して衝撃振動試験の有効性を検証した.その結果,鉄筋降伏前後の非線形的な力学的挙動を固有振動数で表すことの可能性が示唆された.本論文は,今後のRC構造物の維持管理の手法に対して重要な知見を与えるものであり,工業的,工学的に価値の高い成果を導き出していることから論文賞に値する.
技術賞 1件

坂井 建宣(埼玉大学),大矢 豊大(東京理科大学),小柳 潤(東京理科大学)

受賞研究:樹脂および複合材料の熱特性による変形評価の可能性, 日本実験力学会講演論文集分科会合同ワークショップ2021, No.21, pp.3-6(2021)
授賞理由:本技術は,材料の変形にともない発生する熱力学的エントロピーに着目した新たな変位負荷履歴の計測方法である.具体的には,材料の変形にともなう熱力学的エントロピー変化と機械的エントロピー変化を対比することで,材料の熱分析によって,その材料のこれまでに受けてきた変位履歴を計測する技術である.この技術を応用すれば,例えば,現在使用中の構造材の熱分析を現場でおこなうことで,その構造材が製造・施設されてから受けてきた変位履歴を評価することができる.その変位履歴をもとに,その構造材の余寿命を診断することが可能となる.本技術は,構造材の健全性評価,余寿命評価のためのこれまでにない新たな技術として非常に価値があり,工学分野を大きく発展させる可能性があることから,技術賞に値する.
学術奨励賞 1件

小島 朋久(中央大学)

受賞研究:PIV法とデジタル画像相関法を応用したゲルの内部ひずみ測定法, 実験力学 Vol.21, No.1, pp.35-40 (2021年3月)
授賞理由:本論文では,ゲル内部のひずみ測定法を提案している.非常に柔らかいため変形特性の測定が難しいとされるゲル材料の内部のひずみ分布の測定を光学的計測手法であるPIV法とデジタル画像相関法を組み合わせて用いることにより達成しており,実験力学分野における学術および技術の発展への貢献が大きい.ゲル材料に代表されるソフトマテリアルに関する研究はソフトロボットやバイオエンジニアリングの分野の発展に伴って大いに発展しつつあるため,実験力学的技術への需要が高まってくることが予測されることから,今後の発展性が大いに期待できる.よって,本論文は学術奨励賞に値する.
 

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Last Updated Sep. 6, 2022