image
The Japanese Society for Experimental Mechanics
日本実験力学会
 ホーム  > 顕彰について  > 学会賞について  > 2021年度学会賞表彰選考結果報告
2021年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告

2021年度日本実験力学会学会賞受賞者が選考委員会において決定しました.2021年度総会(2021年8月26日,WEBにて開催)において発表を行い,受賞者には表彰状と記念のメダルを送付いたしました.

(敬称略)
特別賞 (功績賞) 1件

澤井 徹(近畿大学教授)

授賞理由:澤井徹氏は,熱流体工学およびバイオマスを専門分野とし,持続可能な社会の構築に寄与することを目的に,再生可能資源であるバイオマスのエネルギー利用・マテリアル利用,熱エネルギーシステムに関する研究を推進し,顕著な業績が多数ある.特に,固体バイオ燃料に関しては,産業分野で使用されている石炭および石炭コークスを代替えするバイオ燃料開発に取り組み,トレファクション改質技術やバイオコークス成形技術については,国内の先導役を担っている.国内における固体バイオ燃料のISO国内審議委員会の委員を務め,固体バイオ燃料の普及活動ならびに実用化に貢献している.また,関連する学会賞も2件受賞されるなど国内外の高い評価を受けており,実験力学分野の発展のために多大な貢献をした研究者の一人である.
また,同氏は日本実験力学会において,2014年度以降,会員増強特任理事,2016年度年次講演会実行委員長,副会長および会長を歴任し,学会の発展に尽力された.特に会長就任時には会員増強のための数々の施策を提案,実施および成果を上げ,さらに学会の将来に対するグランドデザインを提示されるなど,学会の企画,運営に筆舌しがたい多大な貢献をされた.
以上のように,澤井徹氏は熱流体工学およびバイオマスに関する実験力学分野の学術・技術の進歩および学会の企画・運営に貢献するところが極めて大きく,特別賞(功績賞)に値する.
論文賞 2件

中垣勝敬(YKK(株)),樋口理宏(金沢大学),池谷拓郎(金沢大学大学院),立谷 宏(金沢大学),喜多和彦(YKK(株))

受賞論文:織物の交錯点を計測点とするDIC法による布の変形測定法,実験力学 Vol.20, No.4, pp.272-280 (2020年12月)
授賞理由:本論文は,ファスナのような織物製品の生産工程におけるインライン測定のために,非接触測定法であるデジタル画像相関法(DIC法)を適用している.織物の周期性に着目して,たて糸とよこ糸の交錯点の検出方法を検討し,この点を変位分布計測の計測点として使用することを提案している.また,模擬実験により,糸の配向角,伸び率および糸密度の空間分布と時間変化を測定しており,初期状態で織組織にゆらぎがある場合でも,各測定値を随時計測できることを示しており,提案方法の有用性を明らかにしている.したがって,本手法を用いることにより織繊維のインラインでの変形測定が可能となり,生産効率の向上や品質の向上に大きく寄与することができることから,論文賞に値する.

山本梨乃(神戸市立工業高等専門学校),三宅修吾(神戸市立工業高等専門学校),金築俊介(愛知工業大学)
生津資大(愛知工業大学),後藤大輝(愛知工業大学),訓谷保広(愛知工業大学),小金澤智之(高輝度光科学研究センター)

受賞論文:放射光X線回折を用いたAl/Ni多層粉末材料の発熱反応中における結晶構造解析,実験力学 Vol.19, No.1, pp.30-37 (2019年3月)
授賞理由:本論文は,SPring8での放射光X線回折実験を通じて,Al/Ni多層粉末材の自己伝播発熱反応過程の結晶構造変化を伴う発熱反応のメカニズムを時間分解実験で高精度に捉えることに成功した世界初の論文である.著者らは反応前の面心立方晶のAlとNiから最終的に生成される金属間化合物に至るまでの反応中の動的結晶構造変化のメカニズムを明らかにするとともに,発熱反応特性の支配因子の特定を行った.特に,圧延率の増加とともに発熱反応の最高到達温度が上昇する現象が生成エンタルピー最大のNiAl金属間化合物がダイレクトに形成されるために起こったこと,その結晶構造変化の過程を時間分解X線回折実験で詳細に捉えることができたことは,世界的見地からも特筆すべき研究成果であり高く評価できる.一方,圧延率が低い場合はバイレイヤー厚が厚い状態となり,幾つかの金属間化合物を仲介してNiAlにたどり着くことから,結果として反応伝播速度が遅く,かつ,熱量が小さくなることも明らかにしている.Al/Ni自己伝播発熱反応は数十m/sで高速自己伝播するために反応メカニズムの理解が困難であったが,本論文でそれを明らかにしたことは材料学的な意義が極めて高く,論文賞に値する.
技術賞 2件

Shotaro TAGUCHI, Kyohei TAKEO, Satoru YONEYAMA
田口祥太郎(青山学院大学),竹尾恭平(青山学院大学),米山 聡(青山学院大学)

受賞研究:Computing Stresses from Measured In-plane Strains in Viscoelastic Body under Plane Stress Condition, Advanced Experimental Mechanics, Vol. 5 (2020), 135-140.
授賞理由:従来より,平面応力状態にある粘弾性体の面内ひずみから面内応力を求める場合には,ポアソン比一定の仮定をし,ひずみを測定して応力を計算するが,この応力算出方法には厳密ではないという問題があった.本技術は,この問題に対し,対応則により得られるラプラス変換面での構成則を用いることで解決する方法を提案した.さらに,数値ラプラス変換および逆変換の際に表れる問題点を解決し,提案する応力算出方法の有効性を示している.以上の改良型の数値ラプラス変換を利用した応力を算出する技術は,他に類似した方法はなく優れたものである.本研究成果によりポアソン比一定の仮定をすることなく,粘弾性体の応力を精確に算出することが可能となり,技術賞に値する.

生津資大(京都先端科学大学)

受賞研究:マイクロフォークによるダメージフリーサンプリング技術,実験力学 Vol.19, No.2, pp.127-130 (2019年6月)
授賞理由:本技術は,カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンに代表されるナノ材料に欠陥を導入することなく把持して移設する新しいサンプリング技術である.CNTは宇宙エレベータの構造材料として期待される高強度ナノカーボンであるが,その引張強度の実測には直径1〜5nmの単層CNTを把持する必要がある.ナノ材料のマニピュレーションには光ピンセット等の技術があるが,材料自体に欠陥等のダメージを与えてしまうことから,ダメージフリーでの真の強度値の実測は困難であった.受賞者は,先端が二股に別れたマイクロフォークを集束イオンビーム加工技術を駆使して準備し,それを電子顕微鏡内で操作して単層CNTの下部に潜り込ませ,電子線誘起蒸着法でCNTをフォーク先端に固定して移動させるという一連の実験技術を確立した.この技術により,二股のフォーク間のCNTはダメージフリーが実現し,60GPaを超える引張強度の実測に成功した.特許出願するとともに,一連の研究成果はNature Communication誌に掲載され,高い評価を得ており,技術賞に値する.
学生研究奨励賞 1件

内藤匠海(富山県立大学)

受賞研究:On the Active Vibration Control of the Vibrating Objective by Means of a PVDF Actuator, Advanced Experimental Mechanics, Vol. 5 (2020), 178-184.
授賞理由:本研究は,比較的軽量,例えば窓ガラス板や機械の筐体板などで発生する高周波数・小振幅の振動の能動制御を目的に行ったものである.軽量体の制振には軽量のアクチュエータが必要である一方,従来から存在するアクチュエータは重量が大きいものや加振力が小さいもの,強度耐久性に課題があるものが多かった.そのような中,薄膜体であるPVDFに着目し,これを振動制御用アクチュエータとして使用するための基礎検討と制振効果の検証を行い,その有用性を明らかにしたことは,今後の当該分野の発展に寄与することが期待される. 受賞者は,機械の能動型振動騒音制御技術に関する研究に,学部4年時から積極的に取り組んでおり,その成果はAdvanced Experimental Mechanics誌への投稿・掲載をはじめ,アメリカ機械学会,自動車技術会,日本機械学会での口頭発表や各種団体からの受賞につながっており,今後の発展が期待されることから,奨励賞に値する.
 

▲ページ先頭へ


ホームサイトマップお問い合わせ・連絡先
Last Updated Oct. 26, 2021