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The Japanese Society for Experimental Mechanics
日本実験力学会
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2019年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告

2019年度日本実験力学会学会賞受賞者が選考委員会において決定しました.2019年度年次講演会総会(令和元年9月2日,徳島大学)において表彰式を行い,受賞者には表彰状と記念のメダルが贈呈されました.

(敬称略)
特別賞 (功績賞) 1件

加藤 健司(大阪市立大学)

受賞理由:加藤健司氏は,固液のぬれ挙動や気液二相流に関わる分野において顕著な業績を有している.特に,固体に付着する液滴や気泡の体積の理論的・実験的解析,特異なぬれ特性のパターニングやレーザー加熱等を利用した壁面上液滴の運動制御法の開発,防波堤内部に設置する波力発電システムの開発に対して国内外の高い評価を受けており,実験力学分野の進展に多大な貢献をした研究者の一人であると言える.
一方,受賞者は,2009年度から編集理事,将来計画担当特任理事,副会長,会長と永く本会の発展に寄与すると共に,2010年度には年次講演会の実行委員長を務めた.また,2018年度からはAEMの編集委員も務めている.
以上のように,加藤健司氏は,固液のぬれや気液二相流に関わる実験力学分野の学術・技術の進歩および学会の企画・運営に貢献するところが極めて大きく功績賞に相応しいと判断し,特別賞(功績賞)に値する.
論文賞 2件

伊藤 寛明(近畿大学),長 秀雄(青山学院大学),荒井 政大(名古屋大学)

受賞論文:動的粘弾性試験によるガラスの熱粘弾性特性評価,実験力学,Vol.17,No.2(2017),pp.109-116.
受賞理由:本論文では,ガラスの熱粘弾性特性の評価時間の短縮を目的として,熱機械分析装置(TMA)を用いた動的粘弾性試験(DMA)を実施し,ホウ珪酸ガラスの600℃以上の高温環境下における熱粘弾性特性を短時間で評価することに成功している.この点において本論文は新規性が高く,またガラスの熱粘弾性特性の非線形性を新たに提案していることから,実験力学的意義が高く,論文賞に値する.

太田 祐輔(金沢工業大学),畝田 道雄(金沢工業大学)

受賞論文:自動車用タイヤの機能評価に関する研究−ひずみ・最大静摩擦力の同時計測と真実接触率による評価−,実験力学,Vol.18,No.1(2018),pp.57-63.
受賞理由:本論文では,タイヤの紋様であるパターンによって変化する接地面のひずみと最大静摩擦力の同時計測とその評価に着目し,そこからパターンが有する機能の可視化を目的として実施されたものである.特に,パターンの変化に伴うひずみと最大静摩擦力の直接的な影響を検証するため,デジタル画像相関法を利用したひずみ・最大静摩擦力の同時計測装置の試作・運用にも成功している.さらに,タイヤ接地面のひずみが最大静摩擦力に与える影響を詳細に検討するため,転写法によって接地面の真実接触率を定量評価し,それとひずみの相互相関を解明したことは,今後の自動車用タイヤの設計に関わる実験力学に基づく重要な学術的知見であると言え,論文賞に値する.
技術賞 2件

栗林 賢一(ジェイアール西日本コンサルタンツ(株)),川下 光仁(元ジェイアール西日本コンサルタンツ(株)), 武内 宣夫(構造物設計(株) 元ジェイアール西日本コンサルタンツ(株)),津野 義博(ジェイアール西日本コンサルタンツ(株)), 藤垣 元治(福井大学),河野 広隆(京都大学)

受賞研究:簡易かつ経時変化の評価が可能な鉄道橋の健全度評価手法の提案,日本実験力学会講演論文集 分科会合同ワークショップ2018,No. 18-1, 2018, pp.9-10.
授賞理由:受賞者らは,鉄道橋の桁のたわみやたわみ角を地上から高精度に計測でき,複数箇所を同期計測できるサンプリングモアレカメラを用いた計測システムを開発しており, これまで定量化が困難であった動的応答データを比較的容易に入手できるようにしている.さらに,桁の応答値に及ぼす要因として列車速度の影響が大きいことを確認し,列車の車両種別ごとに作用荷重配列が同一で作用荷重も概ね等しい鉄道の特性に着目し,健全度の定量的評価指標として複数点のたわみやたわみ角等の同期計測データの比を用いることを提案し,その有効性を確認しており,技術賞に値する.

彌園 仁志(横浜国立大学),李 志遠(産業技術総合研究所), 津田 浩(産業技術総合研究所),笠井 尚哉(横浜国立大学)

受賞研究:単一カメラと規則性模様を用いた光学的面外変位分布計測法の開発,実験力学,Vol. 15, No. 4, 2015, pp.309-314.
授賞理由:受賞者らは,従来の画像計測では困灘であった面外変位測定技術を新たに開発している.同手法では撮影された規則性縞模様の位相分布をサンプリングモアレ法により解析し,さらに位相勾配から得られる格子ピッチの変化から面外変位を測定し,格子ピッチの1/100の微小な面外変位を測定できることを確認している.本開発手法は構造材料の評価からインフラ構造物や産業プラン卜の面外変位計測に役立つ計測技術であり,技術賞に値する.
奨励賞 2件

石井 陽介(豊橋技術科学大学)

受賞研究:超音波透過特性を用いた炭素繊維強化複合材料積層板の層間界面剛性およびプライ複素弾性率の評価,実験力学,Vol.17, No. 2 (2017), pp.124-130.
授賞理由:受賞者は,炭素繊維強化複合材料積層板(CFRP積層板) に対して様々な入射角度で超音波透過波を自動計測可能なシステムを開発し,測定されたエネルギー透過率の周波数依存性および入射角度依存性からCFRP積層板の層間界面剛性と各層(プライ)の異方性複素弾性率を同時に非破壊評価している.本システムにより同定された異なる積層構成のCFRP積層板の層間界面剛性およびプライ複素弾性率に及ぼす各層の繊維配向角の影響を明らかにしており,奨励賞に値する.

蓮沼 将太(青山学院大学)

受賞研究:Fatigue Life Prediction under Low Cycle Fatigue with Machined Surface Layer, Proceedings of the 12th International Symposium on Advanced Science and Technology in Experimental Mechanics, 044(2017).
授賞理由:受賞者は,炭素鋼STS410の疲労試験を行い,低サイクル疲労寿命に及ぼす表面加工層の影響を明らかにしている.特に,表面形状の異なる試験片に対して疲労試験を行うことで,表面形状と疲労寿命の関係について詳細に検討している.得られた結果を基にして,表面加工層がある場合の低サイクル疲労寿命予測法を提案している.この提案した予測手法を用いることで,安全側の疲労寿命を予測可能であり,奨励賞に値する.

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Last Updated Sep. 5, 2019