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2014年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告
2014年度日本実験力学会学会賞授賞者が選考委員会において決定いたしました.2014年度年次講演会総会(2014年8月29日(金),兵庫県立大学工学部 姫路工学キャンパス)において表彰式を行い,授賞者には表彰状と記念のメダルが贈呈されました.
(敬称略)
論文賞 2件
島田邦雄(福島大学),早坂隆史(福島大学)
受賞論文:機能性流体による垂直力だけでなくせん断力も感知できる超高感度触覚MCFゴムにおける原理と特性,実験力学,Vol. 12, No. 4,pp. 288-294 (2012) .
受賞理由:
著者らは,磁場に反応する機能性流体を天然ゴムに混合し,磁性金属粉をクラスター状に形成した材料をロボットの外皮として活用できる触覚を有する人工皮膚として開発し,表面粗さ計測,化粧学,生物の肌測定,服飾測定など触覚センサが必要とされる様々な工学分野への適用可能性を示した.また,これまで垂直方向の力を計測することに特化してきた触覚センサに対して,せん断方向の力など,さまざまな方向の力の測定も可能にした.本論文は独創的でかつ学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.
小柳 潤(東京理科大学),米山 聡(青山学院大学),岡部朋永(東北大学)
受賞論文:有孔CFRP積層板のクリープ負荷後残存強度,実験力学,Vol. 12, No. 2,pp. 81-87 (2012) .
受賞理由:
本論文は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に対して,複雑ではあるがより実用的な有孔試験片の時間依存内部損傷(微少クラック等)の画像相関法によるその場観察を初めて遂行している.また,内部損傷の発生・進展に伴い,負荷後の残存強度が上昇することを示し,さらに,この時間依存損傷を考慮した数値シミュレーションにより根拠づけ,内部損傷が最終破壊に支配的である円孔端の応力集中を緩和するメカニズムを明らかにした.本論文は独創的でかつ学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.
技術賞 2件
西田 均(富山高等専門学校),島田邦雄(福島大学),吉野一郎 ((株)不二越)
受賞研究:磁気混合流体を用いた円管内面マイクロ加工の開発研究,実験力学,Vol. 12, No. 4, pp. 361-368(2012) .
授賞理由:
本論文は,これまでコストがかかる等の困難な問題を抱えていた難削材円管内面における精密加工に対して,磁気機能性流体を用いた新規のマイクロ加工法を提案し,さらに,その加工特性と加工原理を明らかにしている.本加工法により円管内面は鏡面になり,また,工具を構成する永久磁石の長さが短い場合,真円度が自動的に向上する画期的な性能を有する.本論文が提案する新技術は従来のホーニング加工法に代わる形状精度に優れるなど種々の利点と特徴を有しており,工業的に有用であり,技術賞に値する.
小田桐諒((株)ジーテクト),石橋洋明(シーケーエンジニアリング(株)),梅崎栄作(日本工業大学)
受賞研究:Flow and Thermal Analysis of Ultraviolet-Curable Resin during Curing Process,J.JSEM,Vol. 12, Special Issue, pp. s75-s80 (2012) .
授賞理由:
本論文は,硬化過程における紫外線硬化樹脂(UV樹脂)の流動と温度を経時的に同時に計測する技術を開発したものである.UV樹脂は収縮により残留応力が生じ,UV樹脂製品の強度的信頼性を低下させるが,強度的信頼性を向上させるためには,残留応力を減少させる必要がある.開発した技術により,硬化過程におけるUV樹脂の動き(流動)は主として硬化時の樹脂の収縮により生じ,反応の際に生じる熱の影響をほとんど受けないことを明らかにした.本手法は,工業的にも有用であり,技術賞に値する.
奨励賞 2件
有川秀一(青山学院大学)
受賞研究:スペックル干渉・画像相関ハイブリッド法による広レンジひずみ測定,実験力学,Vol. 12, No. 3, pp.235-242(2012).
授賞理由:
本研究は,これまで困難であった10-6〜10-2レベルの広範囲にわたるひずみ分布の測定を可能にしている.金属の変形でいえば弾性変形から塑性変形にわたるひずみに相当し,このような変形が分布する変形場を,スペックル干渉法と画像相関法を組合せることによって測定を可能としている.この成果は応力集中部近傍の弾塑性変形場の解析等に対する応用が期待でき,学術的および工業的にも高く評価でき,奨励賞に値する.
佐藤真紀(秋田県立大学大学院)
受賞研究:タンポポの概日リズムと微視的花弁表面形状の関係,実験力学,Vol.13, No.4, pp.353-359 (2013).
授賞理由:
本研究は,タンポポの頭花の開閉運動に着目し,頭花を構成する1枚の花弁が運動する際の変位を非接触光学変位計によって,その場観察で精密に計測し,さらに,花弁表面細胞形状の3次元測定を共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて行い,加工学で使用される手法を用いて,表面粗さとしてデータを整理し,それらの計測結果に基づいて細胞間の水移動を流体力学的に明らかにした.これらの成果は,学術的に高く評価でき,奨励賞に値する.
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