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2013年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告
2013年度日本実験力学会学会賞授賞者が選考委員会において決定いたしました.2013年度年次講演会総会(2013年8月21日(水),由利本荘市文化交流館)において表彰式を行い,授賞者には表彰状と記念のメダルが贈呈されました.
(敬称略)
特別賞 (功績賞)1名
新川 和夫(九州大学応用力学研究所)
授賞理由:
新川和夫氏は,本学会の設立直後の2002年に評議員に就任以来,約11年間にわたり,理事・編集委員長,論文審査委員長,交流理事,総務理事,理事・副会長,および2010年度には会長に就任した.会長就任中には,2011年の創立10周年記念事業委員会委員長として本事業を成功裏に実施し,また,アジア実験力学会との交流・連携促進に向けての協定締結など,本学会の発展運営に大きく貢献された.一方,研究活動においては,実験力学的な計測・評価手法を応用して,複合材料等の広範囲な材料に対する動的破壊・き裂進展・衝撃特性・熱変形などについて,そのメカニズムを明らかにするなど材料強度学の発展に貢献し,本学会論文では技術賞(2004年,2011年),論文賞(2007年)を授与されている.このように実験力学での独創的な研究の推進と発展,ならびに本学会における企画・立案・運営活動への貢献が大きく,功績賞に値する.
略歴
1982年3月 | 大阪大学大学院・基礎工学研究科・博士課程修了 |
1982年4月 | 九州大学・応用力学研究所 助手 |
1988年9月 | ワシントン大学・客員研究員(1989年10月まで) |
1989年1月 | 九州大学・応用力学研究所 助教授 |
2001年11月 | 同研究所 教授 |
学会活動(抜粋)
2002年-2011年 | 日本実験力学会 評議員 |
2004年-2005年 | 日本実験力学会 理事・編集委員長 |
2006年-2007年 | 日本実験力学会 論文審査委員長 |
2007年-2008年 | 日本実験力学会 交流理事 |
2009年-2010年 | 日本実験力学会 理事・副会長 |
2010年-2011年 | 日本実験力学会 理事・会長 |
論文賞 2件
生津 資大(兵庫県立大学大学院工学研究科),中村 純(ヤマハ(株)),樋口 行平((独)科学技術振興機構),前中 一介(兵庫県立大学大学院工学研究科)
受賞論文:Novel Size Effect Phenomena in Single Crystal Silicon Nanowires, 実験力学,Vol.12, No.1(2012)8-12.
受賞理由:
本研究では独自のシリコン微細加工技術を用いて作製した単結晶Si構造体について,ナノ材料特有の機械物理現象を観察・評価している.幅・厚さが200nm程度の単結晶Siビームに対して,AFMによる曲げ試験を行い,塑性変形しない温度領域での塑性現象の観察,破壊直前のすべり線の観察など,世界に先駆けて実験観察に成功している.一方,直径100nm,高さ16μmの単結晶Siナノポールを製作し,自重による曲げ応力(6.6GPa)に耐えうる変形挙動を実験的に明らかにした.このように,本論文はナノメカニクス実験力学として独創的でかつ学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.
荒賀 浩一(近畿大学工業高等専門学校),小見山 修平(大阪市立大学大学院),脇本 辰郎(大阪市立大学大学院工学研究科),加藤 健司(大阪市立大学大学院工学研究科)
受賞論文:界面活性剤水溶液の垂直上昇円管内流れに及ぼす微細気泡の影響,実験力学,Vol.12, No.3(2012)243-249.
受賞理由:
本研究は熱交換器内の活性剤水溶液流れについて,微細気泡の混入により低下した熱伝達率の回復増加について究明している.実験では様々な活性剤濃度とボイド率の条件下で,気泡径を広範囲に変化させ,気液2相流の管摩擦係数と熱伝達率を測定した.その結果,活性剤濃度が低いほどその効果は相対的に顕著となり,伝熱促進率がより大きくなることを実験的に明らかにした.緻密な測定実験による本論文の成果は,様々な工業装置における流体抵抗低減と伝熱促進の技術発展に新たな手法を提案するものであり,学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.
奨励賞 3名
寺島 修(名古屋大学大学院工学研究科)
受賞研究:Measurement of Wall Shear Stress by Using Micro-fabricated Sensor, Proc. ISEM-ACEM-SEM-7th ISEM, (2012) Paper No.C107.
受賞理由:
本研究では流体中の物体に作用する壁面せん弾応力(流体摩擦力)の計測技術の確立を目的に,マイクロホットフィルムとフローティングエレメントを用いた2種類のセンサーを製作して性能評価している.校正試験装置を用いた出力特性評価試験の結果,いずれのセンサーも理論予測にしたがった特性が得られており,今後の発展が期待でき,奨励賞に値する.
石田 真士(北海道大学大学院)
受賞研究:Formation of Nanoporous Anodic Oxide Film on Ti-Al Microchannel Walls, J.JSEM, Special Issue, Vol.10, (2010)210-214.
授受賞理由:
本研究では高い比表面積を持つ触媒反応マイクロリアクターを作製するために,Ti-Al系の微細凹凸からなる金属表面のマイクロチャンネル内壁に,ナノポーラスアノード酸化被膜を電気化学的に形成している.本手法では,平板状のライニング層を用いて最適なアノード酸化条件を確定することにより,内壁全域のナノポーラス化を行うものであり,今後の発展が期待でき,奨励賞に値する.
志岐 和久(佐賀大学大学院)
受賞研究:正方形マーカーを用いた橋梁のたわみ計測法,実験力学,Vol.12, No.4 (2012)375-382.
受賞理由:
本研究では橋梁の耐荷性能や安全性能を評価するために,橋梁のたわみを正方形マーカーターゲットの変位のデジタルカメラ画像解析から計測する方法について提案している.なお,本手法は画像相関法に比べて屋外の照度変化に強く計測精度が良く,既に空港誘導路橋のジャンボジェット機によるたわみ計測にも利用されており,発展が期待でき,奨励賞に値する.
技術賞 2件
幕田 寿典(山形大学大学院理工学研究科),相澤 優太(東北大学工学研究科)
受賞研究:The Degradation Process of Indigo Carmine with Microbubbles Generated from the Hollow Ultrasonic Horn, Proc. ISEM-ACEM-SEM-7th ISEM, (2012)Paper No.N106.
受賞理由:
本研究は超音波によって気泡が膨張収縮する際に瞬間的に高温高圧となる音響化学反応場の製作技術に関するものである.本技術は,中空構造の超音波ホーンによって気泡の発生と超音波の印加を同時に行って,難分解物質のインジゴカルミンを分解することにより明らかにしている.本技術により簡単で効果的に音響化学反応の場が可能となるため,工業的に有用であり,技術賞に値する.
李 志遠((独)産業技術総合研究所)
受賞研究:時空位相シフト法による高精度な縞画像の位相解析技術,日本実験力学講演論文集,No.12 (2012)55-59.
受賞理由:
本研究は非接触3次元形状計測等に用いられている縞画像の位相解析技術に関するものである.本技術は取得した縞画像の時間軸と空間軸の高次元の輝度情報を活用することにより,ランダムノイズに強く,位相シフト誤差や計測時の振動の影響を受けにくい位相解析を可能としており,工業的に有用であり,技術賞に値する.
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