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2010年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告
2010年度日本実験力学会学会賞授賞者が選考委員会において決定いたしました.2010年度年次講演会総会(平成22年8月18日,長崎大学)において表彰式を行い,授賞者には表彰状と記念のメダルが贈呈されました.
(敬称略)
特別賞(功績賞)1名
井口 学氏(北海道大学)
授賞理由:
井口学氏は,約40年にわたり管内非定常乱流の特性解明や旋回噴流を利用した新たな攪拌法の提案とその環境浄化プロセスへの適用等に携わり,多くの有益な成果を得た.また,本会の理事,副会長,会長として,永く本会の発展に寄与し,活躍した.このように,実験力学の分野における学術・技術の進歩・発展に対する功績は大であり,功績賞に値する.
略歴
1973年 | 大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了 |
1991年 | 大阪大学助教授(工学部材料開発工学科) |
1996年 | 北海道大学大学院教授(工学研究科物質工学専攻 |
2005年 | 北海道大学大学院教授(工学研究科材料科学専攻) |
学会活動(抜粋)
2004年4月〜 | 日本実験力学会 評議員 |
2004年4月〜2009年8月 | 日本実験力学会 理事 |
2007年4月〜2008年7月 | 日本実験力学会 副会長 |
2008年7月〜2009年8月 | 日本実験力学会 会長 |
受賞
2004年 | 日本鉄鋼協会 学術功績賞 |
2006年 | 日本実験力学 会論文賞 |
2007年 | 日本実験力学会 技術賞 |
2008年 | 日本実験力学会 論文賞 |
論文賞 2件
横山 隆 (岡山理科大学),中井 賢治(岡山理科大学)
授賞論文:構造用エポキシ系突合わせ接着継手の衝撃引張強度:被着体と接着厚さの影響,実験力学, Vol. 8, No. 1, pp. 24-31, (2008).
授賞理由:
著者らは,構造用エポキシ系突合わせ接着継手の衝撃引張強度を決定するために,圧縮型ホプキンソン棒により衝撃間接引張試験が実施できる特別なハット型継手試験片を考案した.2種類の被着体を用いて同一形状試験片により,負荷速度および接着層厚さが突合わせ継手の引張強度に及ぼす影響を詳細に検討した。本手法は,接着継手の耐衝撃性に対する信頼性を精密に評価できる有用な試験法である.本論文は独創的でかつ学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.
小野 勇一(鳥取大学)
授賞論文:Cyclic Stress Measurement Method Using Electrodeposited Copper Foil (Static Stress Effect on Grain Nucleation and Grain Growth), Journal of JSEM, Vol. 9, Special Issue, pp. 112-117, (2009).
授賞理由:
著者らは,電着により作製した銅薄膜が繰返し負荷を受けると粒子成長が起こることを利用した応力測定法において,実用性を向上させる研究を行った.特に著者らは,機械・構造物がしばしば経験する複雑な負荷に対し,静的応力が粒子成長の発生と増加にほとんど影響を及ぼさないことを明らかにした. このように,本論文は独創的でかつ学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.
技術賞 2件
柾谷 明大(和歌山大学),森本 吉春(一般社団法人モアレ研究所),宮川 直人((株)アーツテックラボ),南 潔((株)アーツテックラボ), 村上 僚祐(和歌山大学大学院), 藤垣 元治(和歌山大学)
授賞研究:リアルタイム形状計測のための全空間テーブル化手法用FPGAメモリボードの改良
(1) 柾谷明大, 森本吉春, 宮川直人, 南潔, 村上僚祐, 藤垣元治, リアルタイム形状計測のための全空間テーブル化手法用FPGAメモリボードの改良, 日本実験力学会講演論文集, 分科会合同ワークショップ2009, 58-63(2009).
(2) Masaya, A., Fujigaki, M., Murakami, R., Morimoto, Y.: High-accuracy and Real-time Shape Measurement Using Whole-space Tabulation Board, ICEM 2009 (2009).
(3) 柾谷明大,村上僚祐,藤垣元治,森本吉春:高速かつ高精度形状測定のための全空間テーブル化手法メモリボードの開発,日本実験力学会講演論文集,No. 9, pp. 354-358 (2009).
(4) 特許出願:藤垣元治,森本吉春,柾谷明大,村上僚祐:全空間テーブル化手法を適用した計測装置用メモリボード,計測装置用の撮影装置,計測装置,及び微小変位計測装置,特願2009-146812 (2009, 6.19).
授賞理由:
著者らは,全空間テーブル化手法を適用したFPGAメモリボードを新たに考案し,さらに改良を加えることで,より高速なものとする技術を開発した.本手法により,製造ラインにおける製品検査への適用,人体形状計測による医療への適用および服飾分野への適用等,多くの分野での利用が期待できる技術を開発した.このように,本技術は工業的に有用であり,技術賞に値する.
井門 康司(名古屋工業大学),富山 幸治(名古屋工業大学大学院・(株)東海ゴム)
授賞研究:磁場を用いた発泡性樹脂の多孔質構造制御
(1) 富山幸治,井門康司:非一様磁場を用いた発泡性樹脂の多孔質構造制御,実験力学,Vol. 8, No. 4, pp. 366-370 (2008).
授賞理由:
著者らは,発泡性樹脂の多孔質構造を化学的に調整する方法に加えて,強磁性体微粒子や磁性流体,MR流体等を少量混合して印加磁場下において発泡させることにより,多孔質構造を物理的に制御する新たな技術を開発した.このように,本技術は工業的に有用であり,技術賞に値する.
奨励賞 2名
藤川 俊秀(北海道大学)
授賞研究:粒子を伴う円筒容器内旋回気泡噴流の基本特性に関する研究
(1) 藤川俊秀,福江正治,井口学:粒子浮上を伴う円筒容器内旋回気泡噴流の基本特性,鉄と鋼,Vol. 95, No. 6, pp. 515-521 (2009).
(2) 藤川俊秀,福江正治,植村知正,井口学:円筒容器内旋回気泡噴流による固体粒子の攪拌,鉄と鋼,Vol. 95, No. 12, pp. 895-901 (2009).
(3) Fujikawa, T., Uemura, T. and Iguchi, M.: Behavior of a Chain of Very Small Bubbles in Stagnant Water, Proc. 4th Int. Symp. on Advanced Fluid/Solid Science and Technology in Experimental Mechanics, Niigata, Japan, CD-ROM (2009).
授賞理由:
藤川俊秀氏は,気泡噴流の海洋環境浄化への利用を着想し,閉鎖性水域の底質,水質のオゾンを用いた浄化法について研究を行った.特に,実用化に向けて,ノズル出口の中心を底板の無い円筒容器内の中心軸に設置したJ字型ランスから空気を鉛直上向きに吹込み,定常的な気泡噴流の旋回現象の発生を明確にし,その基本特性について明らかにした.これらの研究成果は,今後の発展が期待でき,奨励賞に値する.
渡邉 健太(日本工業大学大学院工学研究科博士前期課程)
授賞研究:新規開発液体食品用容器の衝撃落下特性の評価に関する研究
(1) Watanabe, K., Umezaki, E. and Futase, K.: Deformation Behavior of Liquid-Packaging Bags under Drop Impact, J. JSEM, Vol. 9, Special Issue, pp. 95-99 (2009).
(2) Watanabe, K., Umezaki, E. and Futase, K.: Effects of Case Shape on Pressure in Newly Developed Containers for Liquid Food Subjected to Drop Impact, Proc. 4th Int. Symp. on Advanced Fluid/Solid Science and Technology in Experimental Mechanics, Niigata, Japan, CD-ROM (2009).
授賞理由:
渡邉健太氏は,液体食品容器として利用されているプラスチック製容器の問題点,例えば環境問題や資源の有効利用の問題点等を解決するために開発された新たな容器(再利用可能なプラスチック製外箱に液体を内包したプラスチックフィルム製袋を入れるもの)の衝撃落下特性について,落下衝撃を受ける液体包装袋の変形と内圧を評価した.さらには,落下衝撃を受ける液体内包液体包装の流体構造連成有限要素法解析を行い,実験値と一致すること等を明らかにした.これらの研究成果は,今後の発展が期待でき,奨励賞に値する.
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