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The Japanese Society for Experimental Mechanics
日本実験力学会
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2009年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告

2009年度日本実験力学会学会賞授賞者が選考委員会において決定いたしました.2009年度年次講演会総会(平成21年8月6日,拓殖大学)において表彰式を行い,授賞者には表彰状と記念のメダルが贈呈されました.

(敬称略)
特別賞(功績賞)1名

横山 隆 氏(岡山理科大学)

授賞理由
横山隆氏は,実験力学の分野において,衝撃荷重下における構造物・材料の動的挙動を解明するために,解析手法と新たに開発した試験法を適用して,有益な成果を得た.特に,応力波の伝播に基づく衝撃材料試験法の開発は,各種材料の衝撃特性評価の分野に先導的な役割を果した.また,本会の理事,副会長,会長として,永く本会の発展に寄与し,活躍した.このように,実験力学の分野における学術・技術の進歩・発展に対する功績は大であり,功績賞に値する.

略歴
1971年大阪大学工学部精密工学科卒業
1973年 大阪大学大学院工学研究科修士課程精密工学専攻修了
1974年 愛媛大学助手(工学部機械工学科)
1979年 大阪大学助手(工学部精密工学科)
1989年 大阪大学助教授(工学部精密工学科)
1990年岡山理科大学教授(工学部機械工学科)
1992年 ドイツ学術交流会(DAAD)特別研究員(ハンブルグ工科大学)
学会活動(抜粋)
平成17年5月〜平成19年4月日本非破壊検査協会 応力・ひずみ測定分科会主査
平成18年5月〜平成20年4月 日本材料学会 衝撃部門委員会委員長
平成19年4月〜平成20年3月 日本実験力学会 会長
平成20年2月〜平成21年2月 日本航空宇宙学会 材料部門委員会委員長
受賞
平成11年5月日本非破壊検査協会 奨励賞
平成14年7月日本軽金属学会中国四国支部 優秀論文賞
平成15年3月 日本材料学会衝撃部門 業績賞
平成18年3月 日本実験力学会 技術賞
特別賞(貢献賞)1名

二瀬 克規 氏(株式会社悠心)

授賞理由
二瀬克規氏は,日本実験力学会設立時からのメンバーとして,評議員,理事,副会長を歴任し,永年にわたって本学会の発展運営に寄与した.特に,産業界出身としての立場から,産学連携の推進に尽力し,本学会と産業界との橋渡しに多大な貢献をした.なかでも,産学連携支援センターの設立・運営に於いては,中心的な役割を果たした.また,本学会の中でも活発に活動を行っている産業応用分科会において,主査として、常にリーダーシップを発揮して新企画を発案し、他の分科会とも共同しながら,産業界から多くの参加者を得て,研究会を開催している.二瀬克規氏のこれらの業績は本学会の貢献賞に値する.
略歴
1978年大成ラミック株式会社 研究開発室長
1983年 大成ラミック株式会社 研究開発室長 取締役製造部部長兼任
1991年 大成ラミック株式会社 常務取締役
1993年 大成ラミック株式会社 R&Dセンター常務取締役
1998年 学位取得(工学)
2007年 株式会社悠心 設立 代表取締役社長
学会活動(抜粋)
(1)日本実験力学会 理事 2001年度
(2)日本実験力学会 副会長 2002年度〜2005年度
(3)日本実験力学会 特任理事 2006年度〜2008年度
(4)日本実験力学会 評議員 2001年度〜現在
(5)日本実験力学会・産業応用分科会幹事 2008年度〜現在
論文賞 2件

藤垣元治(和歌山大学),足村陽平((株)A&M),松井貴男((株)ニコン),松井 徹(和歌山大学),森本吉春(和歌山大学)

授賞論文:位相シフトデジタルホログラフィにおける再生像の標準偏差を用いた再生距離の同定,実験力学,Vol. 7, No.4, pp.29-33 (2007).
授賞理由
著者らは,位相シフトデジタルホログラフィにおいて,再生距離を変化させると再生像の輝度分布の標準偏差が変化し,この標準偏差は再生距離が実際の光学距離に一致するときに極大になる現象を発見し,この現象を利用することで,光学距離を実測せずに求まる独創的な再生距離同定手法を考案した.このことにより,これまで実施されなかったマイクロマシンのひずみ分布計測に位相シフトデジタルホログラフィが適用できる可能性が得られた.このように,本論文は独創的でかつ学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.

須藤誠一(秋田県立大学),梨本和正(新潟県警察),矢野哲也(秋田県立大学),二村宗男(秋田県立大学)

授賞論文:双翅目昆虫の翅の形態学的特性と翅を用いたマイクロエネルギー変換器の開発,実験力学,Vol. 6, No. 4, pp.428-434 (2006).
授賞理由
著者らは,実験力学的手法および電子顕微鏡などを用いて,双翅目昆虫の翅を詳細に計測し,昆虫のはばたき特性を調べると共に,低レイノルズ数領域で特性を発揮する飛翔器官の形態と機能を明らかにした.さらに,昆虫の翅の有する機能,磁性流体の流動潤滑特性およびNdFeB永久磁石を有機的に融合し,全く新しいバイオ融合型マイクロエネルギー変換器を試作し,数百mVの出力電圧を得ることに成功した.このように,本論文は独創的でかつ学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.
技術賞 2件

佐野 雄二((株)東芝),政木清孝(沖縄工業高等専門学校),秋田貢一(東京都市大学),越智保雄(電気通信大学)

授賞研究:高エネルギー放射光による表面処理材の損傷評価技術の開発
(1) Sano, Y., Obata, M., Akita, K., Masaki, K., Ochi, Y., Suzuki, H., Sato, M. and Kajiwara, K.: Characterization of Laser-peened Materials by Synchrotron Radiation and Neutron Diffraction Techniques, J. JSEM, 7, Special Issue, pp. 61-67 (2007).
(2) Sano, Y., Masaki, K., Akita, K., Ochi, Y. and Kajiwara, K.: Visualization of Fatigue Cracks in Aluminum Alloy by Computed Tomography with X-ray Phase-contrast, Proc. 2nd ISEM-OSAKA, (2007).
(3) 佐野雄二,政木清孝,越智保雄,秋田貢一,梶原堅太郎:放射光を使用したマイクロCTによるアルミニウム合金疲労き裂の可視化,材料,Vol. 57,pp. 395-400 (2008). (4) Masaki, K., Sano, Y., Ochi, Y., Akita, K. and Kajiwara, K.: Investigation of Fatigue Crack Behavior with Synchrotron Radiation on AC4CH Casting Aluminum Alloy, J. Solid Mech. Mater. Eng., 2, pp. 1104-1113 (2008).
(5) Sato, M., Sano, Y., Kajiwara, K., Tanaka, H. and Akita, k.: Non-destructive Measurement of Residual Stress Depth Profile in a Laser-peened Steel at Spring-8, Proc. 9th Int. Conf. on Synchrotron Radiation Instrumentation (SRI2006)(Daegu, Korea), (2006).

授賞理由
著者らは,SPring-8の高エネルギー放射光を利用して,構造材表面層に存在する残留応力の深さ方向分布を非破壊で高精度に測定する技術(高エネルギーX線回折技術)と構造材表面および内部に生じたき裂の3次元的形状を非破壊で画像化する技術(屈折コントラストCT技術)を開発した.これらの技術は,新しい表面処理技術の効果の確認や処理条件の最適化において極めて有用であり,レーザーピーニング技術の確立と実構造物への適用において特に重要な役割を果した.このように,本技術は工業的にも有用であり,技術賞に値する.

川端弘俊(大阪大学),碓井建夫(大阪大学)

授賞研究:排ガス・廃液からのダイオキシン類簡易除去技術
(1) Kawabata, H., Yabunaka, B., Tanabe, M., Usui, T., Marukawa, K. and Hara, S.: Dioxin’s Removal from Combustion Gas by Gas Injection into Water, J. JSEM, Vol. 7, pp. 108-113 (2007).
(2) Kawabata, H., Ono-Nakazato, H. and Usui, T.: Simple Removal Method of Dioxins in Wastewater by Adsorption on Polyolefin Particles, J. JSEM, Vol. 8, pp. 138-141 (2008).

授賞理由
著者らは,燃焼過程にけるダイオキシン類の生成が主として排ガス中に残存する微細な浮遊カーボン系物質によることを解明すると共に,排ガスを水中にインジェクションすることによる排ガスからのダイオキシン類除去技術を開発した。また,廃液中に存在するダイオキシン類をポレオレフィン粒子に付着させて除去する技術を開発した.これらの簡易的な実用化技術は,ダイオキシン類の生成抑制や排出削減技術の発展に大きく貢献した.このように,この技術は工業的にも有用であり,技術賞に値する.
奨励賞 3名

前 博行((株)本田技術研究所)

授賞研究:アルミ鋳造合金の延性破壊特性に関する実験的研究
(1) 前博行,Teng, X., Bai, Y., Wierzbicki, T.:アルミ鋳造合金の広応力3軸度域における延性破壊特性,実験力学,Vol. 8, No.1, pp. 45-51 (2008).
(2) 前博行,Teng, X., Bai, Y., Wierzbicki, T.:アルミ鋳造合金A356における型材と鋳造欠陥の延性破壊特性への影響,日本実験力学会講演論文集,Vol. 8, pp. 328-330 (2008).
(3) Mae, H., Teng, X., Bai, Y., Wierzbicki, T.: Calibration of Ductile Fracture Properties of Two Cast Aluminum Alloys, Proc. Int. Conf. on Exp. Mech. (ICEM13) (Alexandroupolis, Greece), (2007).
授賞理由
前博行氏は,アルミ鋳造合金において応力3軸度を考慮した破壊特性評価法を新たに構築し,それを延性破壊モデルとして提案し,汎用有限要素解析ソルバに組み込むことにより,アルミ鋳造合金の強度評価を可能にした.さらに,アルミ鋳造部品において重要となる,鋳造成形の型材料の鋳造欠陥や破壊特性に及ぼす影響を広範囲な応力3軸度域において明らかにした。これらの研究成果は,実部品の強度評価における精度と信頼性を向上させ,自動車鋳造部品の開発に大きく寄与することが期待でき,奨励賞に値する.

坂井建宣(首都大学東京)

授賞研究:高分子材料のクリープ挙動に及ぼす影響因子を考慮したクリープ解析
(1) 坂井建宣, 宗宮 詮:ガラス繊維強化ポリカーボネートのクリープ挙動に及ぼすフィジカルエージングの影響,材料,Vol. 56, No. 5, pp. 399-405 (2007).
(2) Sakai, T. and Somiya, S.: Estimating Creep Deformation of Glass-Fiber-Reinforced Polycarbonate, Mechanics of Time-Dependent Materials, Vol. 10, No. 3, pp. 185-199 (2006).
授賞理由
坂井建宣氏は,時間依存性材料である高分子材料について,クリープ挙動に及ぼす影響を時間遅延効果に着目し,実験および線形粘弾性理論を基にした解析を実施した.特に,温度・繊維含有率・結晶化度・フィジカルエージング・吸水・吸湿率の影響因子を考慮したクリープ解析手法を考案した.さらに,材料が受けた熱履歴の影響を考慮したクリープ解析をも可能にすると共に,クリープ解析の適用範囲を明らかにした.これらの研究成果は,高分子材料のクリープ解析に大きく寄与することが期待でき,奨励賞に値する.

鈴木雅富(大阪大学)

授賞研究:気液二相流の熱流動特性に関する研究
(1) Matsui, G., Fujino, H. and Suzuki, M.: Two-Phase Flow Sensing Using Differential Pressure Fluctuations, J. JSEM, 7, Special Issue pp. 50-55 (2007).
(2) Matsui, G., Suzuki, M. and Kaji, M.: Characteristics of Boiling Flow in Helically Coiled Heat-Transfer Tube, J. JSEM, 8, Special Issue pp.72-77 (2008).

授賞理由
鈴木雅富氏は,水平管内気液二相流を対象に,差圧変動の統計処理に基づいて,流動様式やボイド率を簡易に計測する手法の提案を行い,エアコン枝管のような細い管路における気液二相流の流動計測法として有効であることを示した.また,ヘリカル型蒸気発生器の伝熱管内流動に関する知見を得るために,水ー窒素を作業流体とした低クオリティ条件における二相流の伝熱実験を行い,低クオリティ条件でDNBが繰返し発生することを実験的に明らかにした.これらの研究成果は,今後の発展が期待でき,奨励賞に値する.

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Last Updated October 14, 2009