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2008年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告
2008年度日本実験力学会学会賞授賞者が選考委員会において決定いたしました.2008年度年次講演会総会(平成20年7月1日,北海道大学)において表彰式を行い,授賞者には表彰状と記念のメダルが贈呈されました.
(敬称略)
特別賞(功績賞)1名
松井 剛一 氏(筑波大学名誉教授)
授賞理由:
松井剛一氏は,気液二相流の革新的な計測手法として画像処理について開発し,二相流の力学の解明に大きく貢献した.日本実験力学誌に投稿した論文のほかにも,日本機械学会論文集,計測自動制御学会論文集,International Journal of Multiphase Flow, Experiments in Fluids, Multiphase Science and Technologyなど世界的に権威のあるジャーナルに多数論文を掲載しており,その業績は顕著である.さらに,「機械の力学」,「気液二相流技術ハンドブック」,「流体実験ハンドブック」,「混相流の可視化画像計測」,「混相流ハンドブック」,「改訂 気液二相流技術ハンドブック」,「実験力学ハンドブック」などの著書も多数執筆しており,実験力学分野における学術・技術の進歩・発展に対する多大な功績を考慮して,功績賞に値する.
略歴
1969年 | 大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻(博士退学) |
1969年 | 大阪大学助手・講師(基礎工学部) |
1979年 | 筑波大学助教授(構造工学系) |
1989年 | 筑波大学教授(構造工学系/機能工学系) |
2003年 | 近畿大学教授(生物理工学部)(2008年退職) |
2003年 | 筑波大学名誉教授・工学博士 |
学会活動(抜粋)
1991年9月 | 混相流国際会議(第1回)議長 |
1998年7月〜1999年7月 | 日本混相流学会 会長 |
2001年1月〜2005年12月 | 日本実験力学会 総務理事・副会長 |
2006年1月〜2007年8月 | 日本実験力学会 会長 |
2006年〜 | 実験力学国際シンポジウム(ISEM)運営理事会メンバー |
2007年8月〜 | 日本実験力学会 顧問 |
受賞
2002年8月 | 計測自動制御学会 論文賞 |
2003年7月 | 日本実験力学会 論文賞・技術賞 |
2005年3月 | 日本機械学会 フェロー |
2005年8月 | 日本混相流学会 業績賞 |
2006年3月 | 日本実験力学会 論文賞・実験力学高度専門術士(専門分野 流体) |
2006年8月 | 日本混相流学会 論文賞・名誉員 |
特別賞(貢献賞)1名
伊藤 秀美(東北大学)
授賞理由:
伊藤秀美氏は,日本実験力学会の理事・評議員を歴任し,本学会の進歩・発展・向上に永年にわたって寄与してきた.バイオメカニクス分科会の設立において,中心的役割を果たし,特に,幹事として会の発展に尽力した.年次講演会・オーガナイズドセッション・分科会活動,特にバイオメカニクス・ワークショップの開催においては,常にリーダーシップをとって新しい企画を発案し,会の運営に尽力した.伊藤秀美氏のこれらの業績は,本学会特別賞貢献賞に値する.
略歴
1971年 | 東北大学・助手(歯学部歯科補綴学第二講座) |
1982年 | 東北大学・講師(歯学部附属病院第二補綴科) |
1993年 | 米国 UCLA歯学部・客員研究員(5カ月) |
2000年 | 東北大学大学院歯学研究科・講師(顎口腔機能解析学分野) |
2000年 | 東北大学大学院歯学研究科・講師(口腔システム補綴学分野) |
2008年 | 東北大学大学院歯学研究科・准教授(口腔システム補綴学分野) |
学会活動(抜粋)
2002年度〜2003年度 | 日本実験力学会 理事 |
2002年度〜2003年度 | 日本実験力学会 評議員 |
2001年度〜2008年度 | 日本実験力学会・バイオ分科会幹事 |
日本実験力学会主催・第1回〜7回・バイオ・ワークショップ開催・実行委員 |
論文賞 1件
中畑 佑介(大阪電気通信大学),Charles W. Knisely(Bucknell University),西原 一嘉(大阪電気通信大学),井口 学 (北海道大学)
授賞論文:クロスフローファンの騒音低減法の開発と内部流れの可視化,実験力学、Vol. 7、No. 4, pp. 349-354
授賞理由:
著者らは,世の中に普及しているルームエアコン内部に設置されているクロスフローファンに着目し,独自の手法を用いて低騒音化を図り,ファン内部に発生する偏心渦と騒音との関連性について述べている.騒音低減と内部流れを関係付ける一つの要因として軸方向に異なる挙動を有する偏心渦に着目し発生騒音との関連性について可視化実験を行い検討しており,流路中心面に対して偏心渦中心が左右非対称となることにより騒音レベルが低減するといった知見を得ている.本論文は独創的でかつ学術的意義が極めて高く,論文賞に値する.
技術賞 2件
米山 聡(青山学院大学)
授賞研究:マイクロ波長板アレイを用いた位相シフト画像の同時撮影法の技術開発
米山聡,水原直樹,菊田久雄,森脇耕介,マイクロ波長板アレイを有するCCDカメラを用いた位相シフト縞画像の同時撮影,実験力学,Vol. 6, No. 3, pp. 275-281 (2006).
授賞理由:
著者らは,構造複屈折マイクロ波長板アレイを有するCCDカメラを用い,一度の撮影により複数の位相シフト画像を取得する方法を開発した.このカメラでは,CCD素子の各画素上にマイクロ波長板および偏光板が取り付けられており,4枚の位相シフト画像の情報を1枚の画像として一度の撮影で得ることができる.すなわち,撮影された瞬間の縞の位相情報を得ることができる.そのため時間変動問題への適用が可能となる.本手法は,種々の利点と特徴を有しており,実験力学的に意義深いばかりでなく ,工業的にも有用であり,技術賞に値する.
島田 邦雄(福島大学),松尾 良夫(FDK(株))
授賞研究:改良型磁気混合流体研磨液を用いた新しい磁気浮揚研磨手法の確立
島田邦雄,松尾良夫,山本慶太,磁場に反応する新しい機能性流体を用いたフロートポリシングの研究,実験力学,Vol. 7, No. 2, pp. 168-176 (2007).
授賞理由:
磁気混合流体研磨(MCF)は代表者のオリジナルのアイデアによるものであり,研磨,加工学の分野において学術的にも工学的にもその進展に貢献している.磁気浮揚研磨(MFP)の抱える問題点を解決するため,繊維状の緩衝剤を用いた改良型の磁気混合流体研磨液を用いて,新しいMFPの研磨手法を確立し,MCF研磨の優位性と研磨原理について実験的に明らかにした.本手法は,実験力学的に意義深いばかりでなく,工業的にも有用であり,技術賞に値する.
奨励賞 3名
中畑 佑介(大阪電気通信大学)
授賞研究:管内等加速流れの乱流遷移に関する実験的研究
(1) 西原一嘉, Charles, W. Knisely,中畑佑介,佐々木康,井口学,円管内等加速度流れにおける乱流遷移と速度分布,実験力学,Vol.7, No.1,pp.62-67(2007).
(2) 中畑佑介,Charles, W. Knisely,西原一嘉,佐々木康,井口学,円管内等加速度流れの臨界レイノルズ数,実験力学,Vol.7, No.2, pp.142-147(2007).
(3) 中畑佑介,Charles, W. Knisely,西原一嘉,佐々木康,井口学,円管内等加速度流れにおける乱れの伝播特性,実験力学,Vol.7, No.2,pp.148-154(2007).
(4) 中畑佑介,Charles, W. Knisely,西原一嘉,佐々木康,井口学,円管内等加速度流れにおける乱流遷移のウェーブレット解析,実験力学,Vol.7, No.2,pp.155-161(2007).
(5) 中畑佑介,Charles, W. Knisely,西原一嘉,佐々木康,井口学,定常層流状態から始動する円管内等加速度流れの管入口近傍における乱流遷移と速度分布,実験力学,Vol.7, No.2, pp.162-167(2007).
授賞理由:
中畑佑介氏は,円管内および正方形管内等加速度流れの乱流遷移とそれに伴う速度分布や乱れのRMS値の変化に関する実験的研究を系統的に行い,上記のように多くの有益な成果を得ている.それらは今後の各種管路内非定常流れの乱流遷移の研究に資するところが極めて大きく,奨励賞に値する.
玉男木 隆之(舞鶴工業高等専門学校)
(1) 玉男木隆之,曽我部雄次,粘弾性棒を伝ぱする縦波の減衰・分散特性,日本機械学会論文集A編,72巻,719号,pp1100-1107 (2006).
(2) 玉男木隆之,曽我部雄次,PMMA棒を用いた粘弾性SHPB法の精度の検討,実験力学,Vol.6,No.4,pp. 446-451 (2006).
(3) 玉男木隆之,曽我部雄次,低インピーダンス材料の動的特性評価,実験力学,Vol.7,No.1,pp.56-61 (2007).
授賞理由:
玉男木隆之氏は,粘弾性材料の動的特性について,粘弾性棒中を伝ぱする縦波に着目し,3次元効果を考慮した波動伝ぱ実験および解析を行い,1次元初等伝播理論の適用限界を考察した.また,近年よく用いられている動的特性評価法の一つである粘弾性SHPB法の精度を検討し.従来の金属棒SHPB法による手法では評価することが困難であった「低機械的インピーダンス材料」について,動特性を評価する手法を新しく提案した.その成果は,高分子材料や生体材料などの時間依存性材料の動的応力-ひずみデータが高精度に得られることを示唆するものであり.学術的および工業的にも高く評価でき,奨励賞に値する.
佐藤 新吾(北海道大学)
(1) 佐藤新吾,大参達也,井口学:機械式攪拌浴への上置き低密度粒子の分散挙動と巻き込み時間,実験力学,Vol.6, No.4, pp.405-411 (2006).
授賞理由:
佐藤新吾氏は,機械式攪拌法においてインペラ回転軸を浴中心からずらした偏心攪拌法において,渦の開口部がインペラ回転軸から離れ,渦管が傾斜するような傾斜渦が形成することにより,攪拌効率が飛躍的に向上することを示すとともに,傾斜渦が現れる条件を明らかにした.これらの成果は,学術的および工業的にも高く評価でき,奨励賞に値する.
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