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The Japanese Society for Experimental Mechanics
日本実験力学会
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2004年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告

日本実験力学会 2004年度学会賞選考委員会委員長
松井剛一

 2003年度より日本実験力学会学会賞の授賞が行われることになり、表彰規定(実験力学、2巻4号、pp.291-294)および募集会告(実験力学、3巻3号、pp.85)に基づき、2004年度学会賞選考委員会の厳正な選考審査により、以下のように2004年度日本実験力学会学会賞受賞者(特別賞(功績賞)1名、論文賞2件、技術賞1件、奨励賞2名)を選定し、理事会で決定した。表彰式は、7月24日の2004年度年次講演会場(仙台)にて行われた。

(敬称略)
特別賞(功績賞)1名

西岡俊久(神戸大学)

「ハイブリッド実験法の概念の創生と関連手法の開発における功績」
授賞理由:
 西岡俊久氏は、動的亀裂伝播に関する精密な生成形シミュレーションに初めて成功し、ハイブリッド実験・数値法の概念およびその有効性を示した。その後、非線形破壊や動的破壊パラメータを評価するハイブリッド実験・数値法、さらに、動的破壊経路を予測する混合型・破壊経路予測モードシミュレーション法を考案した。また、弾性変形場、弾塑性変形場、定常熱伝導温度場において、モアレ干渉法等の光学的手法において得られる実験値の誤差やノイズを自動的に検出・消去し、実験的手法のみでは得られない物理量を求めることのできるインテリジェントハイブリッド法を創出し、その有用性を実証した。このように、実験力学分野における学術・技術に対する功績は大であり、功績賞に値する。
論文賞 2件

須藤誠一(いわき明星大学),露木浩二(いわき明星大学),菅野和彦※(いわき明星大学)※非会員のため、表彰対象外

「飛翔昆虫の翅特性とはばたき挙動」, 実験力学, Vol.2, No.4, pp.257-263 (2002)
授賞理由:
 著者らは、光学的な非接触手法を用いて飛行昆虫の翅特性およびはばたき特性を求め、実験力学的観点から昆虫の飛行機能を考察した。すなわち、一見して平板のように見える昆虫の翅表面の凹凸をサブミクロンのオーダーで精密に計測し、形態形状の物理的な意味および解釈を得た。また、昆虫胸部のスケルトン振動を計測することによって、筋肉運動に関連する昆虫の巧みな飛行制御性を明らかにし、さらに、はばたき時における翅運動の軌跡を3次元的に計測して昆虫のはばたきによる揚力生成機構の多様性を明らかにした。このように本論文は独創的でかつ学術的意義が極めて高く、論文賞に値する。

河田幸三(東京大学名誉教授),橋本彰三(小山高専名誉教授),益田義治(埼玉工業大学)

「たて衝撃を受ける有限長の柱の応力応答の高速光弾性解析」, 実験力学, Vol.3, No.3, pp.165-171 (2003)
授賞理由:
著者らは、直下型地震を受ける建築物の柱について、著者らによって提案された応力波解析法により予測される、初期たて衝撃により発生する応力波によって引き起こされる応力増大や応力集中現象や、建築物の安全性を高めるためには柱と床の結合部の反射率をできるだけ小さくすることの有効性を、半導体ひずみゲージ援用の高速光弾性実験と理論解析により検証した。その結果、応力波解析法により予測される内容は、実験結果とよく一致することを確認した。この応力波解析法は、耐震構造の建築物に適用することによって地震対策に新たな道を切り開くものとして評価される。このように本論文は独創的で優れており、論文賞に値する。
技術賞 1件

森田康之(九州大学)、新川和夫(九州大学)、東藤 貢(九州大学)

授賞理由:
著者らは、位相シフトモアレ干渉法および画像解析法を開発することにより、微視的変形を2次元的に、かつその分布を高精度で測定することを可能にした。さらに開発した手法を、現在設計されている種々の電子パッケージの熱変形計測に応用し、熱変形をサブミクロンからナノオーダの高精度で評価できること、さらに定量的な熱ひずみ解析が可能であることを示した。電子パッケージにおける定量解析は、国内はもとより国外においてもほとんど成されておらず、計測工学、実験力学的にも意義深いものである。この技術は、また、近年の電子パッケージ小型化、薄型化に伴う高精度な計測要求に応えるもので工業的にも有用であり、技術賞に値する。
奨励賞 2名

藤川正毅(青山学院大学大学院博士後期課程)

「Collocation法を基にした線形粘弾性マクスウェルモデルのProny級数近似法」, 実験力学, Vol.3, No.4, pp.278-284 (2003)
授賞理由:
藤川正毅氏は、粘弾性応力解析の分野における定量的な応力解析への基礎となるリラクゼーションモジュラスの特性係数関数の決定法について提案を行った。提案された手法は、従来の級数近似手法では数式化の煩雑さから近似精度の問題や汎用性に劣るなどの様々な問題点・条件を整理し、それら問題点を解決するような級数近似法である。さらに、熱硬化性、熱可塑性樹脂の違いに関わらず、汎用的・自動的かつ高精度に級数近似可能なことを示した。今後、粘弾性材料のより定量的な評価による解析への発展が期待でき、奨励賞に値する。

鈴木崇郎(天馬マグテック株式会社)

「電子スペックル干渉法によるせん断負荷を受ける木材の変形測定」, 日本実験力学会講演論文集, No.3, pp.63-67 (2003)
授賞理由:
鈴木崇郎氏は、電子スペックル干渉法を用いてせん断負荷を受けるエゾマツの2次元的変形特性を詳細に解析した。従来のせん断試験による木材評価は、負荷と負荷作用点の変位等を基にした試料全体の平均特性によっていた。このような評価法によって、部位ごとに力学特性が異なる複雑な複合材料である木材の力学特性を十分に把握することは困難であった。電子スペックル干渉法を用いることによって、木材の破壊までの大変形が測定でき、木材に存在する年輪が木材のせん断変形に大きな影響を与えることを示した。今後、不均質材の力学的特性の評価法および木材の力学的特性の解明に寄与することが期待でき、奨励賞に値する。

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Last Updated August 10, 2004