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日本実験力学会のさらなる発展を目指して
日本実験力学会 会長 澤 井 徹
2017年岡山理科大学で開催されました総会におきまして、第15期の会長を拝命することとなりました。これまで14期にわたり、歴代会長および執行部の方々が学会の運営ならびに発展のためにご尽力されてきたその成果を振り返りますと、その責務の重さに、身が引き締まる思いです。学会のさらなる発展に向け、理事会、評議員会、事務局ならびに国際シンポジウム担当委員会、産学連携センター等とも連携を図りながら、鋭意努力をして参りたいと考えております。
日本実験力学会が日本光弾性学会の発展的改編によって2001年に発足し17年目を迎えました。前々会長の鈴木新一先生のご努力により会則が変更され、会長、副会長、理事の任期が今年度より2年となりました。これにより理事会の構成員は、2年間の時間軸で学会運営についての議論・検討を行っていくことになります。企業、大学等では、組織の持続的な運営と発展のために、PDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを回すことが求められています。2年任期の運営体制であれば、1年目にP+D実行後、1年後の総会において会員諸氏からの意見をいただき、2年目のC+Aに反映させる2年サイクルのPDCAに取り組むこともできます。学会におけるPDCAサイクルでは、2年以上の期間を要する課題もあり、この場合には2年間のP+Dを、次期理事会に引き継ぎ、C+A評価・改善を検討していくことも考えられます。今期から2年体制の取り組みが始まり、試行錯誤的なところもありますが、2年サイクルで完結すべき目標と長期目標をそれぞれ明確にして、学会運営を進めて参りたいと思います。また、できるだけ2年毎に理事会メンバーの入れ替えを図り、評議員と理事の入れ替わりも促進させながら、幅広く会員の意見を取り入れた持続可能な組織運営ができるように努めて参ります。
2009年度、学会が創立10周年を迎える前年において、当時会長の梅崎栄作先生が5つの活動方針を提示されていました。このうち、3つを以下に示します。
1.分科会の増強(分科会設置数の増加と分科会内での研究会の開催回数の増加)
2.研究成果の外部への発信の強化(J-STAGEによる論文の無料公開の促進,論文選書の出版準備等)
3.実験技術の産業界への普及の強化(年次講演会や分科会等における技術講習会等の開催)
上記は「会員および社会にとっての魅力ある学会活動」を継続的に実践していくための非常に重要な指針となっており、これまでも多くの検討が行われてきています。とりわけ、1.に示された分科会活動は日本実験力学会を特徴付ける会員相互の情報交換の場となっており、分科会への企業参加をこれまで以上に促進させていくことができれば、3.で示された研究成果の社会への還元にも結び付くことになります。また、あらためて、下記に抜粋した学会設立の趣旨を見直してみましても、分科会活動あるいは複数の分科会の横断的な交流が、学会のさらなる発展にとって重要な役割を演じることになるのは明白です。
「計測技術、実験手法の進展を考えたとき、現段階ではいまだ単独の解析技法として議論されることが多い方法も、近い将来必ずや種々の手法を有機的にまた合理的に組み合わせたハイブリッド手法が確立され、実験室レベルの問題処理から産業・工業現場における実用的手法の開発が要求されるようになってくる、これを具現化させるため実験力学分野を総合的に取り扱いうる学会組織の構築・編成が不可欠である」
PDCAサイクルの目標の一つとして、2009年度の活動方針ならびに学会設立の趣旨にも立ち返り、分科会のさらなる増強を掲げたいと思います。また、学会誌「実験力学」あるいは英文誌「AEM」への論文投稿の動機づけ向上策として、J-STAGEによる論文の公開(すでに実行済み)に加えて、論文引用検索機会の増大等にも結び付くESCI(Emerging Sources Citation Index)への登録も重要な目標になると考えています。一方、ここ数年来検討されてきたのが「財政健全化」です。会員数増、実験力学やAEMへの投稿論文数増、年次講演会やISEMへの参加者数増、といった学会の魅力向上・収入増に結び付く取り組みと共に学会運営や会員サービスに影響のない範囲での経費削減策も引き続き検討していきたいと考えています。
2017年度、2018年度の2年間、さらに魅力ある学会とするため、会員の方々と共に、学会運営に取り組んでいく所存です。次期の2年目には、日本実験力学会も創立20年の節目を迎えることになります。20年の節目にうまくバトンが渡せるように、微力ではありますが努力して参りたいと思います。日本実験力学会・会員の方々のご支援とご協力よろしくお願い申し上げます。
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