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The Japanese Society for Experimental Mechanics
日本実験力学会
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日本実験力学会の組織と課題

日本実験力学会  会長 井口 学   

 日本実験力学会は来年度で創立10周年を迎えます、この間、歴代の会長、副会長、理事、評議員はじめ会員の皆様のご尽力によって、会員の数こそ前身の日本光弾性学会の約20%増と目覚ましいものではございませんが、活動領域は固体力学を主対象としたものから流体工学、生体工学、伝熱工学、環境工学などの分野へも大きく広がり、横山隆前会長が昨年の就任時のご挨拶に詳しく述べられていますように、活動内容には目を見張るものがございます。今年度は、この8年を振り返り、次の10年の舵取り決める重要な年になろうかと思います。このような時に、会長を拝命し、その責務の重さに身の引き締まる思いでおります。皆様方のご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 さて、私は鳥や魚(もちろん生きているものです)を観察するのが好きで、テレビの関連番組や写真集につい目がいきますが、いつ見ても驚かされるのは隼に襲われたムクドリの群やマグロに狙われたイワシの群が一糸乱れぬ行動をとり、災難から逃れようとする姿です。このような群れ行動の詳細についてはよく分かっていないところがあるようですが、各個体の行動が迅速に全体に伝わり、しかも多くの情報が短時間の内に的確に処理されて各個体の行動を律する様が見受けられます。群れの固体数は、多い時には1万や10万のオーダ?にもなるといわれております。

 これに引き換え私ども人間社会の組織では、規模が小さい時には上に述べた処理が迅速かつ的確に行われる場合が多いようですが、構成員の数が多くなるにつれて、飛躍的に難しくなり、組織を維持、発展させるための方策は組織の大きさに依存して変化するとともに複雑になって、内乱、外乱に適切な対応ができなければその組織の存続のおぼつかないことは周知のとおりです。

 鳥や魚の行動から類推すれば、組織の大小に関わらず、組織を維持、発展させるために必要とされる基本的な事柄は、構成員各個人の意見がフィルタ?のかかることなく、正確かつ迅速に全体に伝わり、処理されて各個人の行動を律することであるように思います。大事なことは個人の姿が見える形態をどうとるかということでしょう。それでは、具体的にどのような方策をとればよいのかということですが、残念ながら私は解答を持ち合わせておりません。ただし、本学会の採用している分科会活動にヒントがあるように思われます。分科会の特徴は、少ない人数でも容易にかつ自主的に立ち上げることができるだけでなく、解散も容易であり、独自の活動を自由に展開できることにありますが、もちろん活動内容のチェックは総会で受けることになります。すなわち、分科会活動は他の学会に類を見ない極めて柔軟な発展的組織形態といえるでしょう。規模の大きな会社や学会では組織を細分化して効率的な運営を目指していますが、再分化された組織の中でもフラクタルのように元の組織と同じ構造が多く見られますので、本学会の採用した形態とは基本的に異なるといえましょう。私は本学会の立ち上げには参画しておりませんが、分科会活動を基盤に据えたことは卓見であると考えています。

 今後、分科会の数を増やすことによって会員の増強に繋げ、本学会が主目的としている“実験力学分野における学術・技芸の発展と各種産業への応用にさらなる貢献をすること”が望まれます。なお、本年度の活動の柱となる具体的内容は以下のようにまとめられます。
  1. 分科会の増強:現在、分科会の数は11ですが、本年度中に少なくとも3分科会の立ち上げを目標にしています。
  2. 出版活動の強化と学会誌のImpact factor (IF)対象誌指定:本学会主催の国際会議の精選論文を集めた特集号が毎年6月に発行されています。IFの対象誌となるためには英文の定期刊行物の存在は必須ですので、良質の論文を多数掲載してゆきたいと考えています。また、今年度からIF対象誌となるための申請を開始するとともに、単行本を英文で定期的に刊行する準備を進める予定です。
  3. 国際活動の活発化:The 3rd ISEM-Tainan, 2008を今年の12月7日から10日にかけて台湾の台南市にある成功大学で開催予定です。また、従来から活発な連携活動を行っているSEM, BSSMなどとのさらに密接な関係構築を目指しています。
  4. 公益法人化:今年の12月から具体的な動きが始まりますが、詳細については不明な点も多々あり、また5年の猶予がありますので、費用対効果をよく考慮して適切に対応したく考えています。
  5. 学生会(仮称)の設立と学生会員の増強:本会には学生会員制度はありますが、学生諸君相互の活動を推進するための組織がありません。なんらかの組織の設立準備を始めたく考えています。
  6. 産学連携支援センター:松井剛一元会長をセンター長として産学連携支援センターが昨年度発足しました。上に述べました本学会の目的を達成するためには、どうしても必要な組織です。ところが、この種の組織で今まで成功した例はほとんどないと聞いています。それほど難しいものですが、斬新なアイデアと皆様のご協力を得て是非とも成功させようではありませんか。

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Last Updated September 28, 2010