|
日本実験力学会 会長 岡村 弘之(東京理科大学)
日本実験力学会(The Japan Society for Experimental Mechanics)が、日本光弾性学会の発展的改編により2001年1月1日に発足したことは、この分野に携わる技術者・研究者の一人としてまことにうれしく、またここに至るまでに尽力された多くの方々に心からの感謝する次第です。
はからずも新学会の会長をお受けした私の身に余ることですが、新学会においては、発足の経緯を踏まえながら、新学会誕生の意義を実質化する体制と運営を確立することこそ、今期理事会の最大の責務と考えます。実験手段・計測技術の進歩と新実験事実の発見とを両輪とした実験力学は、科学技術の発展における創造と発展の源泉であります。この認識を共有する人びとのこころざしを主張し実現することを目指したいと思います。
日本実験力学会の発足にあたっては、あらかじめ実験力学を定義したり、学会活動の範囲を規定したりは、していません。実験力学あるいはExperimental Mechanics に類する名を冠した学術団体や国際組織、国際会議などが、すでに少なからずあります。それぞれの伝統・実績や時代の要請によって活動分野の中心は,変化し発展しています。本学会の責務は、実験力学の未組織分野を含む広範にして変化する諸分野において、学問・技術の発展段階と要請に応じた有効な学会活動を支える場を提供することにあると考えます。
このためには、会員の提案・参加による分科会の新設、改編により会員のニーズに応えるなど、柔軟な構造を備える必要があります。材料や構造物の静的・動的な力学挙動の実験的解明などの従来の実績から出発しながらも、実験力学のさらに広い分野、光学的手法以外のあらゆる実験的手法との垣根を取払い、国内および国外との研究交流を行ないたいと考えます。
ともすれば研究者が主体である諸学会のなかで、実験・計測手法の開発から実験技術のノウハウを含む普及や標準化にいたる広範な側面を対象とする本学会においては、研究者と技術者との連携・協力,学術と技術の強い結びつきを意識した活動を重視すべきでありましょう。特に産業の分野では、実験は創造の源泉であるばかりでなく製品の安全性・信頼性・経済性の根幹に繋がります。技術者や実験の現場の活動を十分に配慮した学会活動が要請されます。たとえば、全視野計測法などの実験手法を必要としている企業の技術者との技術交流や、これらの分野を研究している他学会との共同事業などを計画しています。また研究機関でのシーズと産業や医療福祉や環境保全などの分野でのニーズを結びつける活動を、積極的に行なう予定です。
多くの学会は、産業分野別または学問分野別に組織された総合学会あるいは専門学会として組織され、その機能を発揮しています。そのなかで本学会は、実験力学の発展の特質に照らして、効果的な研究発表・協力・連携・情報発信などの場を提供する関連学会横断型ともいうべき、新しい形の学会活動を目指します。同一の実験方法が学問や産業の諸分野で共通に使われながら、その発展成果の享受や連携・協力の機会に必ずしも恵まれていない状況の改善に、寄与したいと考えるためです。
日本実験力学会が実験力学の発展に寄与できますよう、皆様のご指導、ご鞭撻をお願いします。
|