米 山 聡(和歌山大),森 本 吉 春(和歌山大)
Recent Activities of VAMAS TWA26 on Standardization of Full-field Optical Stress and Strain Measurement Methods
Satoru YONEYAMA and Yoshiharu MORIMOTO
Wakayama University
Optical methods in experimental stress analysis, such as photoelasticity, moireinterferometry, speckle interferometry and holographic interferometry, are very valuable in areas where other methods of analysis are not available or impractical. Though optical methods have many advantages, these optical methods are not so widely used. One of these reasons is that currently there are no standards which cover procedures, materials and equipment for any of optical methods. In order to standardize the optical methods in stress and strain analysis, TWA26 in VAMAS is in active and the standardization of full-field optical stress and strain measurement division has been established in JSEM. The present paper describes the current activities of the standardization of full-field optical methods in VAMAS TWA26 and JSEM. Also, the meeting of VAMAS TWA26 held in Portland is reported.
1. はじめに
機械や構造物に生ずる変位・ひずみ・応力などを測定する方法として,スペックル干渉法,ホログラフィ干渉法,モアレ干渉法などの光学的測定法の研究が盛んに行われ,過去10数年の間に大きく進歩している(1)‾(4).これら光学的測定法は高精度であること,非接触での計測が可能であること,高速化が可能であること,2次元の面データとして全視野での計測が可能であることなど多くの利点を有している.また,実験技術だけではなく,画像処理技術などのデータ処理法の発達により,これら光学的測定法はより使いやすく,信頼性の高いものとなっている(5),(6).種々の構造物の軽量化・複雑化が進む中で,これら光学的測定法を検査などの信頼性評価に用いるだけでなく,計算力学法と組み合わせて用いることにより,より信頼性の高い強度評価・設計を行うことができる.
海外では,これら光学的測定法の国際規格を作ることを目的として,VAMAS(7)(新材料と標準に関するベルサイユプロジェクト)の専門作業部会において活発に標準化活動が行われている(8),(9).5‾6年後にはISO(国際標準化機構)規格として提案される予定である.日本として,もしくはアジアとして,この国際標準化に対して意見を述べて貢献するとともに,国内の現状や意見を考慮した主張をするべきである.特に日本は標準化において後進国であり,今後,このような国際舞台に対して貢献をしていかなくてはならない(10).しかしながら,十分な対応ができていないのが現状であり,このままでは取り残される恐れがある.
本論文では,欧米におけるこの標準化の取り組みについて報告し,さらに日本実験力学会の全視野計測法標準化分科会の活動について述べる.
2. 応力・ひずみ測定に関する規格の現状
2.1. 国内における規格
国内における応力・ひずみ測定関連の規格はNDIS(日本非破壊検査協会規格)が中心であり,電気抵抗ひずみゲージ法に関する記述が多い.その内容はひずみゲージ関連の用語,性能表示法,測定法,ひずみ測定器など多岐にわたっている(11),(12).ひずみゲージ法以外では,音弾性法とX線回折応力測定法に関する規格があるだけであり,現状では応力・ひずみ測定にはひずみゲージ法が多く活用されているということがわかる.
2.2. 海外における規格
海外では,ASTM(アメリカ材料試験協会)規格に応力・ひずみ測定に関する規格が多い(12).海外においてもひずみゲージ法に関連する規格が多いが,ASTMの中には光弾性法を用いたガラスの応力測定に関する規格がいくつか記述されている.また,X線応力測定法に関する規格も存在している.
しかしながら,これ以外に光学的測定法に関する規格はほとんどないのが現状である.また,光学的測定法に限らず,応力・ひずみ測定に関する規格は団体規格もしくは業界規格のみであり,ISOなどの国際規格にはまだ取り上げられていない.
3. 標準化の必要性とメリット
種々の光学的測定法の中でも,スペックル干渉法,シェアログラフィ法,光弾性皮膜法などは一部の企業において注目され,実際に活用されている.一例を挙げると,ボーイング社やエアバス社などの航空機産業では光弾性皮膜法を用いて航空機の部品の応力測定を行っている.また,海外では電子部品やはんだ等の熱変形を光学的方法によって測定している研究が多く見られる.しかしながら,特に国内の多くの企業においてこれら光学的測定法は用いられていないのが現状である.また,破壊現象や材料の力学挙動の解明を目指す材料力学関連の研究者においても,応力・ひずみ解析に関してはひずみゲージを用いている場合が多い.有限要素法などの計算力学法のみを用いている研究も見受けられる.対象とする問題・現象が複雑になるほど,有限要素法で得られた結果と実際の現象が掛け離れていくのは周知の事実である.電子部品・機械・構造物の強度評価や検査,さらには破壊現象の解明などにおいて,光学的測定法や,光学的測定法と計算力学法のハイブリッド法を用いることにより,現象を明らかにし,信頼性の高い精確な結果を得ることができる.結果として,企業においては信頼性の高い製品をより早く安く設計・製造することが可能となるであろう.
光学的測定法に対する規格は一部の企業における社内規格と,ASTMにおける光弾性法を用いたガラスの応力測定法が存在するのみである.光学的方法の精度や信頼性はその実験方法やデータ処理方法に大きく依存する部分がある.多くの利点を有する光学的測定法を広く普及させ,その測定や検査の結果の信頼性を高め,さらには統一的な品質保証や安全保証をするためには,実験手順,実験装置,データ処理などを規定した規格が必要であるといえる.ただし,標準化によってそれら測定法の発展を妨げるようなことになってはならないので,標準化内容については十分に検討を行う必要がある.
4. VAMAS TWA26の活動
光学的全視野応力・ひずみ計測法の標準化は,1999年にエアバス社のBurguete(13)により提案され,2000年にVAMASの中の専門技術部会の1つTWA26として活動をはじめた.2000年6月には,フロリダ州オーランドで開かれた実験力学国際会議において,VAMAS
TWA26の最初の会議が行われた.ここでは,各国の現状の報告がなされ,標準化の内容や今後の予定が議論された.
2001年6月には,オレゴン州ポートランドにおいてVAMAS TWA26の会議が行われる予定である.この会議において,アメリカからはASTMにおける光学的測定法標準化の活動が報告される.一方,ヨーロッパからは標準化に関する具体的な内容や計画,国際ラウンドロビン試験などについて提案される予定である.一方,著者らはこの会議に出席し,国内の規格の現状や我々の標準化に関する活動について報告することになっている.著者らは,この会議の内容をまとめて,日本実験力学会の講演会において報告する予定である.
5. 日本実験力学会の活動
日本実験力学会では,光学的測定法の国際標準化に対応するため2001年1月に全視野計測法標準化分科会を設置した.その目的は欧米における光学的測定法標準化の取り組みをふまえ,日本側の今後の対応について検討するとともに,光学的全視野計測法に関する研究開発およびその標準化活動を行うことであり,同時に光学的測定法の普及をめざしている.本分科会では,その活動の一環として本年3月に行われた日本機械学会材料力学部門2001年春のシンポジウムの会場および本会ホームページ上において応力・ひずみ測定に関するアンケートを行った.
図1はその結果の一部である.本アンケートの回答者は製造業7,大学・教育32,官公庁4,その他5となっており,圧倒的に大学関係者が多い.企業における実態を調査したいところであるが,なかなか回答を得られないのが現状である.図1より,多くの研究者や技術者が,非接触測定が可能,面データとして広い範囲での測定が可能であるという特性を認め,光学的測定法を使用していることがわかる.図1(e)(r)は光学的測定法には限らず,現在使用している測定法および将来使用したい測定法についての結果である.現在使用している応力・ひずみ測定法ではひずみゲージによる測定がかなりの割合を占めている.一方,将来使う測定法では,最近注目されている光ファイバーセンサー,赤外線応力測定法,電子スペックル干渉法等の光学的測定法が多い.このことから,多くの研究者・技術者が光学的測定法に対して注目しており,また,期待していることがわかる.
6. おわりに
光学的全視野応力・ひずみ計測法の標準化が進み,国際規格が制定された場合,日本国内で関連する機器を生産している企業,それら光学的測定法を用いている企業にも影響を与えるであろう.ヨーロッパ,アメリカ共に標準化に対して積極的な姿勢を示しており,日本を含むアジア側も何らかの対応をする必要がある.国際標準化に対して日本側から何を提案できるか,また,国際規格に合わせて国内規格を整備するべきかどうかなど,これら光学的測定法を研究しているもしくは使用している方々に考えて頂きたい.同時に.多くの方にこの標準化活動に参加して頂きたい.
最後に,この標準化を機会に光学的測定法がこれまでよりも広く普及することを期待している.
文 献
(1) Dally, J.W and Riley, W.F., Experimental Stress Analysis, 3rd Ed.,
McGraw-hill, New York (1991).
(2) Kobayashi, A.S. (Ed.), Handbook on Experimental Mechanics, 2nd
Ed., VCH Publishers, New York (1993).
(3) Epstein, J.S. (Ed.), Experimental Techniques in Fracture, VCH Publishers,
New York (1993).
(4) Rastogi, P.K. (Ed.), Photomechanics, Springer-Verlag, Berlin (1999).
(5) 森本吉春・藤垣元治, 各種変換を用いた応力・ひずみ測定技術, 非破壊検査,
46-7 (1997), 47380.
(6) Huntley, J.M., Automated Fringe Pattern Analysis in Experimental
Mechanics: A Review, J. Strain Anal. Eng. Des., 33-2 (1998), 105-125.
(7) 齋藤鐡哉, 国際標準化におけるVAMAS, 日本機械学会誌, 102-966 (1999),
38-40.
(8) 米山聡・森本吉春, 光学的全視野応力・ひずみ計測法の国際標準化について,
日本非破壊検査協会第32 回応力・ひずみ測定と強度評価シンポジウム講演論文集
(2001), 33-38.
(9) 米山聡・森本吉春, 光学的全視野応力・ひずみ計測法標準化の動向, 日本機械学会材料力学部門2001年春のシンポジウム講演論文集,
No.01-28 (2001), 5-10.
(10) 藤田昌宏・河原雄三, 国際標準が日本を包囲する, 日本経済新聞社 (1998).
(11) 学協会規格ハンドブック非破壊検査, 日本非破壊検査協会 (2000).
(12) 熊沢鉄雄, ひずみ測定関連規格の現状と将来, 非破壊検査, 50-2 (2001),
88-90.
(13) Burguete, R.L., On the Standardisation of Optical Stress and Strain
Measurement Methods, Proc. SEM Annual Conf. Exp. Mech., Cincinnati (1999),
261-263.
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
Figure 1 Results of questionnaires about stress and strain measurement
methods