主査:文字秀明
筑波大学大学院システム情報工学研究科
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幹事:Cheong Kar-Hooi (チョン・カー・ウィー)
産業技術総合研究所計測標準研究部門
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背景と目的
流れの可視化については可視化情報学会という専門学会の他に日本混相流学会,日本機械学会などが扱っており,研究者はかなり重複しているが,それぞれの学会で活発な研究発表が行われている.流体の可視化分野で大きな関心を集めているPIV (ParticleImage Velocimetry )は可視化画像から定量データを抽出する計測手法であるが,そのルーツはスペックル法である.スペックル法は流体中に分散させた微細な散乱粒子にレーザー光を当て,その散乱光が形成するスペックルパターンの移動量から流速を計測する方法である.一方,PIV は流体計測に適した寸法と分布密度の粒子で可視化した画像から粒子像(Particle Image)の移動量を検出する方法として命名された.
図1 は可視化画像から速度計測する手法を可視化法と解析方法を対比させて分類したものである.一般には,図中のPTV とPIV を併せてPIV と呼ばれている.スペックル法やホログラフィ法では写真を用いるが,解析手法的にはPIV と同じアルゴリズムが利用される.
近年の驚異的な小型コンピュータと半導体撮像素子の性能向上の潮流と解析技術の発達によってPIV の性能はこの10 年のほどの間に飛躍的に向上した.現在ではPIVに適した性能の高解像度ビデオカメラの画像を直接コンピュータのメモリに記録するシステムを簡単に構成できる.また,公開された解析ソフトもある.流体計測機器や画像処理装置の会社から種々のPIV 計測システムやソフトウェアが供給されている.気流の計測では1μm 程度のトレーサを高速気流に混入して1000m/s を越える速度の計測が行われており,トレーサの寸法や高速計測性能の面ではLDV と比べて遜色のない性能を実現している.
欧米では高性能のハードウェアシステムを使用した航空関係やエネルギー関連の応用計測の研究発表が目立つ.我国でも企業ではかなり利用されているらしいが,研究報告は少ない.解析方法はFFT で相関関数を計算する方法が大多数であるが,我が国では多くの研究者が様々な画像計測手法の研究・開発を行っており,流体の基礎現象を種々の解析手法を用いて計測している.
- 分科会の目的:PIV 技術の展開と活用
PIV は流体分野の流れの可視化技術として大いに進化した.固体計測分野の画像計測法も進化しているに違いないが,流体分野と固体分野の画像計測の研究の交流はあまり行われていない.
PIV 計測分野では空間分解能や計測精度の向上,3 次元空間の計測などに関心が持たれているが,計測対象としては,微細な空間の現象,混相流,物体と流体の相互作用の計測,物体運動の計測など多くの課題がある.これらの研究に共通して可視化・画像化の技術がキーになっている.
以上の状況に基づいて,本分科会では固体の画像計測と流体の画像計測技術の交流を目的として,当面は
1 )固体壁や気液境界近傍の現象の可視化,
2 )屈折率の異なる物体内部の可視化と計測,
3 )3 次元空間の現象の可視化,
4 )微細な現象の可視化,
などの問題に関連した種々の「可視化」をテーマとして扱うことにしたい.
本分科会では固体計測分野の研究者の積極的な参加を期待している.