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The Japanese Society for Experimental Mechanics
日本実験力学会
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2024年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告

2024年度日本実験力学会学会賞受賞者が選考委員会において決定しました.2024年度総会(2024年9月18日,山形大学)において発表を行い,受賞者には表彰状と記念のメダルを送付いたしました.

(敬称略)
特別賞 (功績賞) 1件

足立忠晴(豊橋技術科学大学 副学長・教授)

授賞理由:足立忠晴氏は,衝撃工学に関する研究および高分子系材料およびその複合材料の力学的特性に関する研究をはじめとする材料力学分野にて研究を行ってきている.その成果は,現在まで「実験力学」に掲載された論文5編および「Advanced Experimental Mechanics」に掲載された論文1編を含む国内外の論文集に2024年5月現在までに合計163編の査読付論文として研究成果を発表し,そのうち半分以上が実験力学に関連する内容となっている.
 衝撃工学に関して衝突試験装置,落錘試験装置をはじめとする多くの衝撃試験装置を開発・設計するとともに新たなデータ解析方法,力学的特性の評価方法を提案し,薄肉構造,ハニカム構造,傾斜発泡材料などの衝撃損傷,エネルギ吸収などを実験的に評価している.最近では,これまで測定ができなかった小形衝撃体の衝突による衝撃荷重および試験片の変形の測定を可能とする新規の測定原理を提案し,それを測定システムとして構築し,「実験力学」において論文として公表し,日本実験力学会論文賞が2018年に授与されている.さらに本方法を発展させ,その妥当性を詳細に検証している.また微小衝撃押込み試験装置を開発してμmオーダーの材料表面の衝撃損傷の評価を可能にしている.
 高分子材料および高分子系複合材料の力学的特性の評価,材料選択,材料設計に関する研究を発表している.繊維強化複合材料の衝撃損傷および損傷後の残留強度について実験的に評価を行い,残留疲労強度の原因を明らかにした.また,ガラス状態およびゴム状態に高分子材料の力学的特性について実験結果および理論的な考察によりナノ粒子充填効果を明らかにしている.
 日本実験力学会において2016年度から評議員を務め,2016年度から2019年度にかけて特任理事として,会員増強,将来計画・会員増強を担当し,2016年から2019年まで論文審査委員長を歴任している.
 日本非破壊検査協会にて実施されているJIS Z2305に基づく非破壊試験技術者の資格認証試験のためのひずみゲージによる測定に関する参考書を10冊(内4冊について編集も担当)を共著にて担当し,講習会において講師を長年にわたって担当している.さらに,日本機械学会主催の応力・ひずみ測定の講習会におけるひずみゲージによる測定に関して2010年より講師を担当しており,ひずみゲージによる測定に関する技術者の育成に貢献している.衝撃工学に関して企業の技術者向けの講演会の講師を2003年から50回以上を担当し,衝撃工学に関する実験力学の普及に寄与している.また,実験力学の内容を含む書籍を共著にて合計30冊を公表している.
 以上のことから,衝撃工学および高分子材料の力学的特性などの材料力学分野における実験力学の学術・技術の進歩,人材育成および学会の運営に大きく貢献しており,特別賞(功績賞)に値する.

論文賞 2件

堀川海音(東京工業大学),安岡哲夫(宇宙航空研究開発機構),水谷義弘(東京工業大学)

受賞論文:凸形状マイクロストラクチャーによるシングルラップ接着接合継手の疲労亀裂進展抑制, 実験力学 Vol.23, No.3, pp.236-244 (2023年9月)

授賞理由:本論文は,航空機構造に適用されているシングルラップ継手を対象に,接着層内の被着材面に設けた凸形状マイクロストラクチャーが継手接着層内を進展する亀裂の速度に与える影響を,実験的,解析的に検討したものである.高さ0.2 mm,幅0.2 mm の凸形状マイクロストラクチャーを被着材に付与したシングルラップ接着接合継手の疲労試験を実施し,凸形状の前後1 mm の範囲で,凸形状がない場合に比べて亀裂進展速度が低下することや疲労試験における最大荷重を変化させても亀裂進展抑制効果は大きく変化しないことを示している.さらに,有限要素法によって凸形状マイクロストラクチャーを有する接着接合継手の引張解析を実施し,凸形状マイクロストラクチャーに亀裂進展抑制効果があることを示している.
 本論文で示されたシングルラップ接着接合継手の有効性を実験的に解明した例は他になく,独創的なものである.これによって,航空機構造の機械締結から接着接合への置き換えが拡大し,機体の更なる軽量化への進展に大きく貢献するものである.以上のことから,本論文は実験力学分野の学術および技術の進歩,発展,向上に大きく寄与するものであり,論文賞に値する.

小俣誠二(熊本大学),竹嵜海翔(熊本大学),森田康之(熊本大学)

受賞論文:粘度不均一性を有する水和ゲルの空間分布計測, 実験力学 Vol.23, No.4, pp.285-289 (2023年12月)

授賞理由:細胞を取り囲む細胞外基質(ECM)はコラーゲン線維の複雑な集合体であり,線維の粗さ,密度,配向を有するミクロ構造であり,その微視的に不均一な力学的特性を明らかにすることは,バイオメカニクスの観点から重要な課題である.本論文では,ECM内の微視的に不均一な粘度を明らかにするために,ゲル内部にある微視的に不均一な粘度分布を計測する装置を開発した.ゲル内に磁性粒子を分散させて,外部磁場を与えることにより粒子の移動速度を計測することによりゲル内の粘度分布を評価している.その結果,25 μm程度の空間分解能で粘度分布を測定することが可能であることを示した.さらに,本装置による測定の妥当性を検証した上で,コラーゲンゲル内の粘度分布を測定して,コラーゲンゲル内に粘度の微視的な不均一性が存在することを明らかにしている.
 本論文で示された測定方法および開発された測定装置は他に例のない独創的なものであり,現状の2次元的な分布計測から3次元的な空間分布測定に拡大することが可能である.さらに,粘度だけではなく弾性率測定への発展にも十分に期待できる実験方法である.以上のことから,本論文は実験力学分野の学術および技術の進歩,発展,向上に大きく寄与するものであり,論文賞に値する.

学生研究奨励賞 1件

武田尚恭(富山県立大学)

受賞研究:On the Energy Harvesting Technique Using a Fluttering PVDF Film with Flow-Induced Vibration, AEM Vol.8, pp.25-31 (2023年)

授賞理由:本論文は,薄膜発電材料であるPVDFに着目し,風流れによりPVDFに大きな振動を発生させ,これにより環境負荷の小さい,環境にやさしい発電技術の開発に関するものである.PVDFを用いた発電システムの構築と発電に最適な風の速さ,発電量が最大となる時のPVDFの振動特性やその振動をもたらすためのPVDF後流の渦構造について検討した.これまで,風車をはじめとして,風を利用する様々な発電技術が考案されてきたが,本論文で提案する技術は風車などで必要とされていた駆動部などをもたず,簡易に設置・発電が可能であることから,大きな発電量は期待できないものの,排風部などに設置して手軽に活用できるものと期待される.
 武田尚恭氏は,大学3年時から環境にやさしい機械づくりに高い興味関心を抱き,積極的に研究活動,特に流体に関連する省エネルギー化技術・環境負荷低減技術の研究に真摯に取り組み,研究成果を国内外の研究者に向けて広く積極的に発信している.英語による口頭発表が1件,日本語による発表が3件,また英文による査読付き論文が3編ある.さらに,Matching HUB Business Idea & Plan Competition(M-BIP)入選(2022年11月),テクノ愛2022奨励賞(2022年11月),いみず学生アイディアコンテスト優秀賞(2023年1月),日本機械学会北陸信越支部学生賞(2023年3月),テクノ愛2023奨励賞(2023年11月),ものづくりinとやま最優秀賞(2024年2月)を受賞するなど,その成果は顕著であり,学生研究奨励賞に値する.

 

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Last Updated Sep. 26, 2024